研究課題
マインドフルネスとは、今この瞬間の経験に受容的な注意でありのままに気づくことである。この能力を高めるための実践法は、特定の対象に意図的に注意を集中する集中瞑想と、経験に対して抑制することなくありのままに気づいている洞察瞑想の2種類の瞑想技法から構成されている。近年、この実践法が人々のウェルビーイングの改善・向上に貢献することが多くの研究で示されている一方で、対象者によってはネガティブな経験を抑制してしまうことで有害事象が生じる事例も示されている。そこで、安全かつ効果的な実践法の適用・開発のために、マインドフルネスの中核的な機能を育む洞察瞑想の心理・神経基盤を解明することが求められている。本年度は、瞑想未経験者72名を対象として、昨年度に開発した介入用教示を用いて、集中瞑想と洞察瞑想の30分の短期介入が、妨害刺激の対処方法に与える影響の違いを検討した。実験では、妨害刺激としての表情顔の中央に呈示された文字の向きを解答する弁別課題を用いた。その後、弁別課題時に呈示した顔と呈示しなかった顔を用いて選好度判断課題を実施した。その結果、対照群では表情顔に対する単純接触効果が見られなかった。しかし集中瞑想群と洞察瞑想群では単純接触効果が見られた。さらに集中瞑想群でのみ介入後のリラックス状態と単純接触効果の間に有意な正の相関が見られた。これらの結果は、統制群では弁別課題で呈示された顔を抑制したために、呈示顔の魅力度が低下したことを示している。また集中瞑想や洞察瞑想の短期介入が、注意制御機能や情動調整機能に影響を与えることを示すとともに、洞察瞑想が集中瞑想による選択的注意を強めることとは異なる心理メカニズムに影響を与えていることを示している。これによって、従来確認されていなかった、瞑想未経験者でも洞察瞑想による情動調整を実施できるということの傍証をえることができた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: 8 ページ: 1-10
10.1038/s41598-018-28274-4
Cancer Board Square
巻: 4 ページ: 22-28
https://doi.org/10.11477/mf.1430200252