研究実績の概要 |
様々な合成高分子や生体高分子からなるヒドロゲルは、その力学特性や高い含水率だけでなく様々な薬物を吸収、放出し得ることから、バイオ・医療への応用が活発に研究されている。その中でも生分解性を有するハイドロゲルは医療応用において、ゲル特有の物理的、機能的特性だけでなく体内での残留の問題点を解決でき、薬物徐放材料や再生医療用足場材料としての応用が期待されている。生分解性の生体高分子は多糖やポリペプチド、核酸などが挙げられるが、動物由来の高分子は病原の混入や均質性などの問題がある。一方、生分解性合成高分子の代表的なものとしてポリ乳酸やポリアセタールなどがあり、側鎖に種々の官能基を導入することで分解速度を制御することが出来る。しかしながら、これらの合成高分子は親水性が低いため、そのゲルの含水性は低く、ヒドロゲルとして応用するには親水性ポリマーとの共重合などの工夫が必要であり、工業生産における安定性や生体内使用時の用途選択性などに課題がある。 そこで本研究では、新規球状多糖である3Dグルカンの種々の機能化を行い、ドラッグデリバリーシステム(DDS)における新規ナノキャリアの開発を行った。種々のサイズを有する単分散の3Dグルカン(直径10nm, 20nm, 30nm, 40nm)に長鎖アルキル基を導入した疎水化3Dグルカンあるいは、スペルミンなどの多価アミンを3Dグルカンに導入したカチオン性3Dグルカンが、細胞内デリバリーシステムとして、有用であることを明らかにした。さらに、3Dグルカンをビルディングブロックとした新規3Dグルカン集積ゲルを設計し、その機能評価を行った。反応性3Dグルカンを光重合して得られるヒドロゲルは、アミラーゼ酵素で分解するとともに内包したタンパク質を放出しえる新規酵素応答性ゲルであることが明らかになり、DDSや再生医療材料として期待される。
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