研究課題/領域番号 |
16J10133
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上辺 将士 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | カルボラン / 芳香族アミン / π電子系分子 / 発光性分子 / 磁性分子 / ラジカルカチオン / 混合原子価化合物 |
研究実績の概要 |
20面体ホウ素クラスターであるカルボランにπ電子系有機分子として芳香族アミンを導入した新規な有機-無機ハイブリッド型分子を開発することが本研究の目的である。芳香族アミンの代表例である、トリフェニルアミン(TPA)のフェニル末端にカルボランクラスターとしてモノカルボランやオルトカルボラン、メタカルボラン、パラカルボランを導入した有機-無機ハイブリッド型分子では、無発光性のTPAと無発光性のカルボランのハイブリッドにより、発光性を付与できることを明らかにした。無発光性のTPAが発光した起源を詳しく調べるために、量子化学計算を行い、振電相互作用の観点から発光過程を解析した。量子化学計算の結果、HOMOはTPA上からカルボランに非局在化していた。一方、LUMOはTPA上に局在化していた。したがって、カルボランを導入した系では重なり密度が小さくなり、内部転換が抑制され、無発光性のTPAが発光したと考えられる。この解析結果は無発光性の分子に発光特性を付与するための新たな分子設計指針を与えた。さらにこれらの化合物は窒素原子を骨格に有しており、酸化可能であることから、電気化学測定、酸化過程に伴う吸収スペクトル測定、溶液ESR測定、酸化状態の量子化学計算を行うことで酸化種の電子状態を調べた。特にオルトカルボランにTPAを導入した分子は特徴的な温度可変ESRスペクトルを示した。この特徴的なESRスペクトルはスルースペース相互作用に基づく混合原子価状態に起因することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通りホウ素クラスターであるカルボランにπ電子系有機分子として芳香族アミンを導入することで、新たな有機-無機ハイブリッド分子を合成することに成功した。さらに、オリゴアセンにメシチル基や芳香族アミンを導入した化合物の合成に成功し、それぞれの化合物の電子状態を解明した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、これまでに得た電子状態に関する諸知見に基づき、量子化学計算を援用しながら、これまでに合成した基本分子骨格を組み合わせ、多様なトポロジーを持つ高スピン分子や電子輸送材料の開発を行う。
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