研究実績の概要 |
今年度はNestin-CreERT2/CAG-CATloxP/loxP-EGFPトランスジェニックマウスを用いることで、脳室周囲器官の終板器官(OVLT)、脳弓下器官(SFO)及び延髄のCentral canalに存在する上衣細胞の一種であるタニサイト様細胞が神経幹細胞のタンパク質発現の特徴について明らかにすることが出来ました。Nestin-CreERT2/CAG-CATloxP/loxP-EGFPトランスジェニックマウスは、タモキシフェンを用いることで神経幹細胞マーカーであるNestin発現細胞でのEGFP誘導を行う。このとき、脳室に面したOVLT、SFO、Arcのタニサイト様細胞および側脳室下帯では、タモキシフェン投与1日後にはEGFP陽性細胞が多数誘導されることが判明した。神経幹細胞は時間がたつと前駆細胞へと分化・移動してしまうため、標識後短い時間で検出する必要がある。よって本結果からOVLT、SFO、Arcのタニサイト様細胞がNestin陽性の神経幹細胞であることを示唆している。さらに、神経幹細胞マーカーとして知られるGFAP, Sox2, Pax6を用いて免疫組織染色を行いました。GFAPに関して、OVLTとSFOでEGFP陽性タニサイト様細胞の70%以上発現し、CCでは約30%が発現していました。Sox2はOVLT、SFO、CCいずれの部位のタニサイト様細胞においてもEGFP陽性細胞の90%以上が発現していることが判明しました。一方、Pax6はOVLT及びSFOのタニサイト様細胞では発現していなかったが、CCで発現していることを確認いたしました。このことはOVLT, SFOに存在する神経幹細胞とCCに存在する神経幹細胞とでは発現しているタンパク質の種類が異なり、その性質が異なる可能性を示唆しています。脳室周囲器官に存在する神経幹細胞の部位特異的な機能およびその異常による病態の解明は、脳梗塞などの脳損傷時の神経幹細胞による修復過程の研究するにあたっての基盤となる重要な知見である。
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