研究課題
(研究1)飼い主のペットに対する価値観: イヌとネコの飼い主に対して質問紙調査を行い、ペットに対するヒト側の価値観を調査した。ネコの飼い主はイヌの飼い主よりも自分のペットを「家族の一員」と見なしていなかったが、両方の飼い主が「家族の一員」と答えた割合は非常に高く、飼い主-イヌだけではなく、飼い主-ネコ間でヒトの母子関係のような愛着関係が示唆された。ただし、ネコの飼い主はイヌの飼い主よりも、自分のペットの高次感情を低く評定した。また、ネコの飼い主では、自分のペットのことを「家族の一員」だと見なしている飼い主ほど、自分のペットの「共感性」を高く評価した。このことから、ヒトからネコへの価値観は、ヒト側の擬人化度にも影響されているかもしれないことを示唆した。(研究2)ネコの音声コミュニケーション解析: ネコが飼い主(ヒト)に示す音声を録音し、状況や文脈によって変わるかどうかを検討した。ネコは飼い主の帰りが遅いと、よりピッチの高い声を発しているなど、いくつかの特徴が見られた。今後は、飼い主に頼んでの録音ではなく、より手軽に・自動的にネコの声を録音できるようなデバイスを製作し、多くのデータを収集し解析する予定である。(研究3)ネコの社会的学習: ネコがヒトの行為を観察・模倣し、自分の目的のため利用することができるかどうかを検討した。現在はまだ個体数が少ないが、ネコはおおむねヒトが選択した方向や行う操作に追従する傾向があった。
2: おおむね順調に進展している
昨年度の成果と合わせ、2本の論文を国際誌に掲載することができたため。
昨年度と今年度の研究から、ネコとヒト間にはヒトとイヌ間のような愛着関係があるかもしれないことが示唆された。しかし、遺伝子から行動へは多くの神経プロセスを経由しているため、中間の過程を明らかにすることが必要である。そのため、30年度はネコとヒトの尿中・唾液中ホルモン(特にオキシトシン)に着目し、ヒトとネコのインタラクションがホルモンに与える影響を測定することで、愛着関係をより詳細に検討する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Behavioural Processes
巻: 141(3) ページ: 316-321
10.1016/j.beproc.2017.02.007.
Frontiers in psychology
巻: 8 ページ: 2165
10.3389/fpsyg.2017.02165.