平成29年度は,市場における消費者の行動と企業における従業員の行動に関して,その背後に潜在するさまざまな要因の影響を明らかにし,「消費者と従業員の選択行動」に関する新たな研究視座を提示することを目的として研究活動を展開してきた。とりわけ,消費者と従業員の行動にバイアスをもたらす要因として,新たに消費者の感情状態(ポジティブな感情状態とネガティブな感情状態)と,人事採用における学歴情報の影響を検討し,これらの影響を定量的に把握するための分析モデルを提案した。 まず,人事採用における学歴情報の影響を定量的に把握するための新たな分析モデルを提案し,平成28年度に実施した調査で収集したデータを用いて実証分析を行った。また,①感情の変化が消費者のメニュー選択行動に与える影響に関する本調査,②観光資源の魅力に関する調査を実施した。①の調査では,ポジティブな感情状態での選択行動とネガティブな感情状態での選択行動について,計70名程度の被験者に対して実験を行い,消費者の感情状態が,消費者のメニュー選択行動に与える影響について定量的に分析した。②の調査では,地理的希少性を持つ観光資源が,消費者の選択行動に与える影響について,計2000名の被験者にクラウド・ソーシングを用いた調査を行った。こうして収集したデータを基に,多様性・不確実性・漠然性等のあいまいさに直面した消費者と従業員の選択行動を記述するための新たなフレームワークや独自の統計的分析モデルを提案した。 こうした研究活動の成果は,国内外の関連学会での発表と,論文誌への投稿を通じて公表している。
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