研究課題/領域番号 |
16J10373
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
金井 太郎 早稲田大学, 創造理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | Disk-gap-band parachute / Supersonic flow / FSI / NURBS / Compressible-flow |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、火星表面探査に向けた超音速パラシュートの紐の流体場への影響を考慮した流体構造連成 (FSI) 解析手法の確立と性能評価である。 パラシュートは、火星での使用実績のあるdisk-gap-band (DGB) パラシュートを対象とした。FSI 解析に先立ち、構造解析と流体解析によってパラシュート形状のアップデートを行った。解析条件は、マッハ数1.4-2.0とした。また、より現実的な形状を再現するために、本研究で構造・流体解析共に基底関数にNURBS (Non-Uniform Rational B-spline) と呼ばれる曲線・曲面モデリング手法を用いた。最初は動圧相当の圧力を用いた構造解析によって変形形状を解析し、それを用いて流体解析を行った。その後、流体解析によって得られた傘部前後の圧力差を用いて、再度構造解析を行い、流体分布の影響を考慮したパラシュート形状を解析した。 圧縮性流体領域で使用可能な気体透過モデルの構築も行った。これまで、homogenized modling of geometric porosity (HMGP-FG) と呼ばれる非圧縮性流体領域におけるパラシュートの傘部透過モデルが提案されていた。しかし、適用可能範囲は非圧縮性流体に限定されており、DGBパラシュートのような圧縮性流体領域では使用できなかったため拡張を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で対象とするパラシュートはdisk-gap-band (DGB)パラシュートと呼ばれ、diskとbandで構成される。このband部は、流れに対してほぼ水平であるため圧力差を見積もることが難しい。そこで、小さめの圧力差を仮定した構造解析によりパラシュートの流体中の形状を概算した。その後、流体解析により圧力差を算出し、再度構造計算を行った。この結果から、band部に与えた圧力差が十分妥当であったことと、この圧力変化には、パラシュート全体の形状感度が低いこともわかった。なお、本解析結果は次年度予定している流体構造連成解析の初期条件として重要な役割を果たす。 本研究のうち、特に流体解析は、ライス大学への6ヶ月の留学中に行った。また、7月に行われた計算工学分野で最も大きい国際学会へは当学会より助成金を得て発表を行った。さらに、本解析はJSTの科学技術の「美」パネル展の優秀作品として表彰された。
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今後の研究の推進方策 |
パラシュート挙動における紐の影響や役割は大きい。パラシュートの紐に沿って衝撃波が伝搬し、加えて、接触を伴う挙動の変化が重要となる。パラシュートを同時に複数使用するクラスターの場合は、パラシュート同士が接触する。また、パラシュート開傘前は畳まれた状態であるため、接触した状態から段階的に開傘する。この事実を踏まえ、まずはパラシュート解析における接触解析を行う。 昨年度は曲線・曲面モデリング手法であるNURBSを基底関数に用いた構造・流体解析を行った。この解析より得られた変形形状を用いて、圧縮性流体解析におけるFSI解析手法の確立と解析に移行する。その結果を元に新規形状の提案を目指す。
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