パラシュートの流体構造連成(FSI)解析に向けて、昨年度までにアイソジオメトリック離散化を用いた圧縮性流体解析、気体透過係数の算出等を行った。これにより、多くの隙間が設けられたドローグパラシュート(リボンパラシュート)をより少ない格子点で表現することが可能となった。今年度はそれらを更に発展させ、実問題としてドローグパラシュートを対象とした、付加質量効果の把握およびFSI解析を行った。 圧縮性流体領域で使用されるドローグパラシュートは、開傘後の早い段階では加速度的に落下する。一般に加速度を伴う運動では、周囲の流体が追従する付加質量効果が知られている。本研究では傘部を剛体として扱った時の付加質量を算出した。その結果、パラシュートが上向きの加速度を持つ場合は、下向きの加速度を持つ場合と比較して、付加質量効果が非常に小さい結果となった。これはパラシュートがおおよそ半球型の形状をしており、加速方向の影響を受けたと考えられる。 FSI解析においては、流体と構造の両方がマッチする初期条件を準備することが重要となる。ドローグパラシュートのような加減速を伴うパラシュートに対しては、これまで非圧縮性流体領域用に確立されていた初期条件の推定方法が有効ではないことがわかった。本研究では、付加質量効果を考慮した新たな初期条件の推定手法を確立した。得られた初期条件を用いて、2種類のペイロード(宇宙船)質量におけるFSI解析を行い、ドローグパラシュートの動的特性を得た。
|