研究課題
本研究の目的は脂質代謝能力の違いが長時間運動中の脂質酸化量にどのように反映されるかを明らかにし、脂質代謝能力に応じた脂質酸化に最適な運動強度範囲を解明することである。平成28年度は定期的な運動習慣のない健康な若年男性11名(肥満者7名, 標準体重者4名)を対象に測定を実施した。事前測定として運動負荷試験を行い、心肺体力の指標となる最大酸素摂取量(VO2max)および脂質代謝能力の指標とされる最大脂質酸化量(maximal fat oxidation: MFO)、最大脂質酸化量が示される運動強度(Fatmax)を測定した。その後、Fatmaxで300kcal消費する長時間運動負荷実験を実施し、運動中の脂質酸化量を呼気ガス分析で測定した。脂質代謝能力と長時間運動中の脂質酸化量との関連を明らかにすべく、脂質代謝能力の指標であるMFOおよびFatmaxとFatmaxでの300kcalの長時間運動中の脂質酸化量との相関関係を検討した。MFO, FatmaxともにFatmaxでの長時間運動中の脂質酸化量との間に有意な相関関係は認められなかった。しかし、肥満者7名に着目するとFatmaxとFatmaxでの長時間運動中の脂質酸化量との間にやや強い相関関係が認められた(R=0.62)。肥満者は鍛錬者や標準体重者と比べて脂質代謝能力が低いと示唆されており、脂質代謝能力に応じて脂質酸化に最適な運動強度は異なる可能性が推察される。本研究は脂質代謝能力と長時間運動中の脂質酸化量との関連を明らかにするのが主な目的であり、様々な脂質代謝能力の対象者を数多く測定する必要がある。今後は鍛錬者も含めて引き続き測定を実施すると共に、血液分析や脂質代謝能力の詳細な解析を含めて検討を実施する。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は実験手法の確立および定期的な運動習慣のない肥満者7名、標準体重者4名の測定を実施した。Fatmaxが全ての人において脂質酸化に最適な運動強度であるならば、脂質代謝能力とFatmaxでの長時間運動中の脂質酸化量との間に関連が認められると推察されるが、これまでに測定した11名では有意な関連が認められなかった。よって、当初の仮説通り脂質酸化に最適な運動強度は脂質代謝能力に応じて異なる可能性が推測される。今後、鍛錬者も含めて様々な脂質代謝能力を有する対象者の測定を進めていく必要があるが、研究はおおむね順調に進展していると考える。
引き続き定期的な運動習慣のない肥満者および標準体重者の測定を行うと共に鍛錬者の測定を実施する。様々な脂質代謝能力を有する対象者の測定結果を血液分析や脂質代謝能力の詳細な解析を含めて検討を行い、本研究の検討課題である「脂質代謝能力の違いが長時間運動中の脂質酸化量にどのように反映されるか」、「脂質代謝能力に応じた脂質酸化に最適な運動強度範囲」を明らかにする。
すべて 2017 2016
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スポーツ歯学
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10.1007/s10995-016-2008-y