研究実績の概要 |
本年度はこれまでの研究成果を博士論文にまとめるとともに、(1) 新規ゼオライトECNU-16の計算と合成、 (2) 機械学習を用いたゼオライト合成データの解釈、 (3) ゼオライトを出発物質としたゼオライト合成における原子位置変化の追跡に取り組んだ。 (1) ゼオライト合成において鋳型として働く有機構造規定剤の働きを理解するために、UOS型ゼオライトの合成系に着目した。UOS型ゼオライトの有機構造規定剤を2つ連結させた「ダイマー」分子を用いることで、新たな骨格トポロジーを有するゼオライト、ECNU-16を合成することに成功した。分子モデリングと空間情報解析を行った結果、連結による有機構造規定剤の運動性の低下がより小さな内部空間を有するECNU-16の結晶化を導くことが示唆された。[Chemistry - A European Journal, 2018, 24, 9247.] (2) 合理的な材料探索のためには、合成条件と合成結果との間の因果関係を解明することが必要だが、先行研究は経験則に基づくものが多く、統一的な議論が不足していた。本研究では文献調査によって得られた合成データを機械学習によって解析し、得られた知見を新たな実験と理論計算によって裏付けた。 (3) ゼオライトの形成過程における原子レベルの構造変化を理解するにあたり問題となるのが、結晶化前の固体が無秩序な構造を有しており、実験による分析が困難という点である。本研究ではFAU型ゼオライトを原料としてCHA型ゼオライトを合成する系に注目し、この課題を回避した。核磁気共鳴による分析と高スループット理論計算によって得られた原子位置の情報の比較から、FAUとCHAに共通する六角柱型の部分構造は維持されないことがわかった。[ChemRxiv, DOI: 10.26434/chemrxiv.7963994.v1]
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