研究課題/領域番号 |
16J10532
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
渡邉 洋平 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 暗号理論 / 計算量的安全性 / 情報理論的安全性 / 動的アクセス制御 / 放送型暗号 / 暗号プロトコル |
研究実績の概要 |
平成28年度は,主に動的アクセス制御可能な暗号技術の研究開発を行い,(1) 計算量的安全性,(2) 情報理論的安全性,共に放送型暗号に特に注力して研究を行った. (1) 計算量的安全性を有し,動的アクセス制御可能な放送型暗号を提案した.通常の放送型暗号同様,暗号化時に暗号文を復号可能な受信者の集合 (受信者集合と呼ばれる) を指定可能であり,かつ復号することなくその受信者集合を変更可能であることから,その意味で動的アクセス制御を有すると言える.更に,提案方式が通常の放送型暗号と遜色のない程度に効率的でありながらも,その安全性を非常に妥当な計算量仮定に帰着できることを示した.また提案方式の更なる効率化を目指し,ユーザ間の対話を許す暗号技術についての研究も行い,国内会議でその成果を発表した.この成果を拡張し,実際に提案方式へ応用することも今後の研究方針のひとつである. (2) 情報理論的安全性を有する動的アクセス制御可能な放送型暗号について,既に国内会議で発表していた成果の完成度を上げ,査読付国際会議にて論文発表を行った.具体的には,(1)の計算量的に安全な方式同様の動的アクセス制御機能を有しつつ,その安全性を情報理論的に証明した.また,暗号文長と秘密鍵長のトレードオフについても,通常の放送型暗号及び当該方式の両方で研究を行い,査読付国際会議や国際論文誌で発表を行っている.更には,通信ネットワークを強く意識することで更にトレードオフを改良可能であることも示し,国内会議で発表した.この内容についても,完成度を上げたうえで権威ある国際会議に投稿予定である. 本研究課題を円滑に遂行することを目的とし,アクセス制御機能を持つIDベース暗号やクラウド上での利用が想定された暗号技術の研究開発も上記の研究と並行して行い,査読付国際会議や国際論文誌で発表を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,動的アクセス制御を実現する放送型暗号について,計算量的に安全な方式,情報理論的に安全な方式,両方について実現することに成功した.当初は同機能を有する属性ベース暗号及び関数型暗号についても研究する計画であったが,放送型暗号が最も基礎となるアクセス制御機能を有しているため,放送型暗号についてしっかりと研究を行い,そこで得られた成果・知見が,動的アクセス制御を有する属性ベース暗号,関数型暗号の研究の基盤になると判断したため,放送型暗号に注力した. それ以外にも,(静的) アクセス制御を有するIDベース暗号 (属性ベース暗号や関数型暗号の特殊ケースとして知られている) やクラウド上での利用が想定されている検索可能暗号等の研究も行った. 多少の遅れはあるものの,属性ベース暗号や関数型暗号への拡張にすぐ着手できる段階にあり,上記研究からも拡張のための知見を得られたことから当初の予想よりも今後の研究が加速することが期待できるため,「おおむね順調に進展している」との評価とした.
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず,計算量的安全性を有する,動的アクセス制御可能な放送型暗号に関する研究の完成度を上げ,権威ある国際会議,論文誌等に投稿予定である. また,動的アクセス制御可能な属性ベース暗号,関数型暗号に関して,実現可能性から考慮し,原理的に実現が不可能または難しい場合は,安全性基準を緩める等して実現を目指す.得られた成果は国内会議及び国際会議,国際論文誌に投稿する計画である. 上記課題を円滑に進めるためにも,静的アクセス制御機能を有する暗号技術や,クラウド上での利用が想定されている方式についても,必要があれば随時研究を行う. また,秘匿解析を実現する暗号技術,特に情報理論的安全性を有するものの研究開発にも着手する計画である.具体的には,加法準同型演算や乗法純同型演算を実現できる暗号技術を提案し,秘匿検索や秘匿パターン照合等への応用を目指す.
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