研究課題/領域番号 |
16J10577
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
横川 拓海 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 運動 / 海馬 / シナプス |
研究実績の概要 |
本研究は、慢性的な運動が神経可塑性関連遺伝子の発現制御を介し、マウス海馬の神経・シナプス形態に作用することで、認知機能改善の一端を担う可能性を解明することを目的としている。今年度は、神経・シナプス形態の観察の前段階として、生化学的な解析に焦点を絞り、慢性運動がマウス海馬の神経・シナプス形態に関わるシグナル伝達および、遺伝子・タンパク質発現に及ぼす影響を検討した。先行研究により神経回路の再構築に関わる最初期遺伝子・栄養因子が運動により増加するとの報告がなされている。従って、運動が最初期遺伝子・栄養因子の発現量に与える影響を検討したところ、複数の最初期遺伝子・栄養因子が慢性運動により増加していた。そのため、慢性運動は神経回路の再構築に関わる分子応答を惹起している可能性を考え、運動が神経・シナプス形態に関わる遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。その結果、マウス海馬において、興奮性シナプス・抑制性シナプスの構成遺伝子の発現量が運動群において有意に増加した。運動がシナプス新生を惹起する可能性が遺伝子発現レベルで示唆されたため、次にシナプス新生に関わるmTORC1経路が運動により活性化する可能性を検討したところ、海馬において、mTORC1経路の下流であるribosomal protein S6のリン酸化が、慢性運動により増加することが明らかとなった。最後に、運動が神経・シナプス形態に関連するタンパク質の発現量に及ぼす影響の検討を実施した。その結果、シナプスを構成する複数の標的タンパク質が運動により増加していた。以上より、慢性運動が、関連する分子の応答を惹起して、神経・シナプスの形態を変化させている可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載した通り、生化学的な解析を遂行し、慢性運動がマウス海馬の神経・シナプス形態に関わる分子応答を惹起するといった仮説に沿った結果が得られている。また、次年度に実施予定である組織化学的解析の予備検討も十分に進めることができている。以上より研究が順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、運動により、マウス海馬において応答することが明らかとなった標的タンパク質の蛍光免疫染色を実施することで応答が見られる海馬の領域を同定するとともに、興奮性シナプスマーカー、抑制性シナプスマーカーを染色することで、興奮性・抑制性シナプスのそれぞれに与える影響を検証する。加えて、ゴルジ染色により、海馬の各領域の神経・シナプス形態に与える影響を検討する予定である。
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