研究課題
本年度は、申請した研究内容の通りに独立して超分子ナノファイバーを形成する分子ペアを見出し、それらが形成するダブルネットワークヒドロゲルの刺激応答性を利用した新奇超分子ヒドロゲルの創出に成功した。各ネットワークは特定の刺激に応じて、ゲルの強度を弱化もしくは強化する。ダブルネットワークヒドロゲルは、各ネットワークの特徴を反映し、ゲルの力学的強度を双方向に制御できる特性を有していた。さらに、このゲルは刺激の順序を認識して、物質の取り込みを制御できることも見出した。このような新しいインテリジェントマテリアルは、ドラッグデリバリーや再生医療などへの貢献が期待できる。また、各ネットワークの刺激応答性を拡張する分子をゲル中に内包することで、2つの生体分子に応答してゾル化するヒドロゲルの開発にも成功した。本系は、多様な非共有結合や化学反応を巧みに制御して達成される、従来とは全く異なるマテリアルである。これらの研究結果は、論文投稿もしくは執筆中であり、研究は順調に進捗している。さらには、独立して形成した複数の超分子ナノファイバーを共集合させる方法も発見し、独立集合体と共集合体の動的変換が達成される可能性も見出した。このような動的構造変換は、非共有結合によって形成される超分子ならではの物性であり、新たな展開を予感させる成果である。上記の通り、申請した研究内容は順調に進行しており、新たな展開も開けつつある。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、申請した研究内容を順調に進捗させることができた。紆余曲折はあったものの、最終的には申請した研究とほぼ同様の結果が得られ、論文にまとめている段階である。データが揃い次第、迅速に論文を投稿する。さらに、申請した研究を進める過程において、興味深い予想外の事実を発見し、これについても研究を開始している。上記のように、本年度は申請研究のみならずに予想外の展開が開けたために、計画以上の研究の進展があったと評価している。
今後、現在得られている分子システムを基盤として、共有結合、非共有結合および化学(酵素)反応を巧みに制御した生体分子応答性ヒドロゲルの開発を継続して続けていく予定である。具体的には、ダブルネットワークヒドロゲルに、さらに別のネットワークを加えたトリプルネットワークヒドロゲルに挑戦する。ダブルネットワークを構築する過程で、ネットワーク拡張の戦略を確立しつつあり、ネットワーク数の増加がヒドロゲルの機能拡張に直結することを世界に先駆けて示すことができると考えている。また、複数の分子が形成する独立したネットワークと、混合した単一のネットワーク間の動的な構造変換に関しても研究を推進する。各状態のヒドロゲルは全く同一分子で構成されているにもかかわらず、刺激応答性などの物性が大きく異なる可能性がある。これまでに報告例のない分子システムであるため、基礎的な知見を徹底して調べ上げていく。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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