研究実績の概要 |
本研究では、ウズラ精子の誘引物質を同定し、精子が精子貯蔵管(SST)へ侵入するメカニズムを解き明かすことを目指した。これまでの研究で、ウズラ精子貯蔵管ではAvBD 2, 6, 11, 12および13が高発現していることを確認しており、これら5種のAvBDをクローニングし、形質転換した大腸菌を用いてリコンビナントペプチドを作成した。リコンビナントペプチドを用いて5種のAvBDが精子の運動性に与える影響を調べたところ、AvBD 6を添加すると精子の直進速度および精子の細胞内pHが上昇することが明らかになった。 また、平成28年度においてSSTへの精子侵入を評価する方法として新たにin vitro精子侵入アッセイ系を構築しており、本実験系がSSTへの精子侵入メカニズムを調べる上で非常に有用であったため、in vitro侵入アッセイ系を主軸に研究を展開した。このin vitroアッセイ系は、SSTを含む粘膜上皮およびhoechst 33342染色した精子を共培養することにより、in vitroで精子侵入を誘導するものである。このアッセイ系を用いて様々な条件下での精子侵入率を比較することで、SSTへの精子侵入に影響を及ぼす影響を調査した。粘膜上皮を60Cで熱処理すると精子がSSTへ侵入しなくなるが、50℃の熱処理群ではSSTへ精子が侵入することが明らかになった。このことは、60℃の熱処理により失活する精子誘引物質がSSTに存在することを示唆していると考えられる。50℃程度の熱に耐性を持つことから、誘引物質はペプチド等の低分子と予想された。また、SSTへの精子侵入に影響を与える要因を調べたところ、精子の運動性とSSTへの精子侵入率に相関が見られた。このことから、SSTへの精子侵入には精子の運動性が必要であり、精子が能動的にSSTへ侵入することが示唆された。
|