研究実績の概要 |
本研究課題は、21世紀における成長産業の一つである電子産業から発生する排水に含まれる有機溶媒等の化学物質、具体的にイソプロピルアルコール(2-propanol)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、モノエタノールアミン(MEA)に着目し、これらを含む排水に対する無加温メタン発酵排水処理技術を確立することを目的とする研究を遂行した。研究内容は、大きく分けて、実験室規模のメタン発酵装置を用いた排水の連続処理による集積培養ならびに性能評価試験と、バイアル瓶を用いた回分分解試験によるメタン発酵特性の解明とした。 集積培養ならびに性能評価試験では、2-propanol、TMAH、MEAを含む1,500 mgCOD/L相当の模擬排水を、処理温度18-19℃、容積負荷15 kgCOD/m3/dayの条件にて、1年間にわたり連続処理した。処理水のCOD除去率は90%以上を維持し、2-propanol、TMAH、MEAのメタン化能を持つ有用な嫌気性細菌群の集積に成功した。 バイアル瓶を用いた回分分解試験では、各有機化学物質のメタン化速度、メタンに至る分解経路、濃度阻害性を評価した。これらの試験により、メタン化速度の観点から2-propanolが難分解性であるが、その一方でTMAHが強い濃度阻害性を有すること分かった。また、TMAHによる阻害は、TMAHのメタン化能を持つ細菌群に対して非可逆的に及ぶものであった。 本研究課題を通して、2-propanol、TMAH、MEAを含む電子産業排水に対するメタン無加温発酵処理においては、特に排水中のTMAHの濃度管理が重要であると考えられた。
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