研究課題/領域番号 |
16J10757
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
屠 宇迪 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | グラフェン / フォトルミネッセンス / 電流計測原子間力顕微鏡 / 真空紫外光 / 発光トランジスタ / エレクトロルミネッセンス |
研究実績の概要 |
本課題では,これまでに培った酸化グラフェン(GO)の真空紫外(VUV)光還元技術を踏まえて,GOの化学・光化学修飾により,GOの発光機能を研究するとともに,GOの構造や発光,電気伝導などに関する学術基盤に寄与することを目的とする.それに加えて,VUV光パターニング手法を用いて,GO・酸化グラフェン還元体(rGO)機能分離型発光トランジスタ(LET)を構築し,GO・rGO二次元LETの実現を目指す.そのために,本年度は以下の3つの研究を遂行した. (1)GOのエレクトロルミネセンス発光を実現するための基礎として,GOのフォトルミネセンス及びそれに対応する電子構造の調査を行なった. KMnO4/H+の二次酸化によるGO蛍光の増強と波長の制御を実現した.GOは510 nmを中心ピークとして,400 nmから600 nmまで広い蛍光発光が見られた.さらに,酸化時間に依存した発光波長の短波長シフトも見られ,発光効率は0.5%から5%に上昇した. (2)GO・rGO二次元LETを作製するための高分解能VUV光パターニングを実現した.以前のVUVパターニング法では,長時間照射により,パターンの分解能が劣化する問題点があった.高還元度かつ高分解能を有するrGOパターンを作製するために,VUVエキシマーランプをコリメート化した.この手法を用いて,パターンの鮮明化を実現し,高いコントラストを有する1 / 3 μmのrGO/GOパターンの作製にも成功した. (3)GO・rGO二次元LETにおいて,ホール及び電子を効率的に輸送するのは重要である.そのために,チャネルの導電性を向上する必要がある.rGO面内の分断したπ電子構造を繋がるために,rGOを多層化することで,三次元共役伝導構造を築き,rGOの電気伝導性を向上した.電流計測原子間力顕微鏡(CAFM)を用いて,多層rGOの電気伝導率および局所電気特性を分析した.その結果,多層rGOの層間に三次元の電流パスが形成され,導電性の増強が見られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題はGO・rGOを用い,従来のLETが有する発光効率や作製・修飾プロセス,キャリア移動度などの問題を克服し,高機能なLETを作製するための基盤技術を開発する.今年度は,GO/rGOの電気・電子物性を変調することで,発光機能及びキャリア輸送機能を持つGO・rGOの作製方法を開発する.それに加えて,GOの担持した基板上に発光とキャリア輸送機能を付加する領域のパターニング方法も開発することを目的とした.研究実績の概要に述べたとおり,高い蛍光発光効率を有する二次元GO材料の作製に成功した.このGO材料はチャネルの発光領域として応用できる.一方,GO試料の多層化とVUV光還元を組み合わせて,rGOの電気伝導性の向上も実現した.このような多層化rGO材料は今後LETのキャリア輸送領域として応用できる.さらに,VUVエキシマーランプのコリメート化により,従来のVUV光パターニング分解能は10 μmから1 μmに向上した.この手法を用いて,GO・rGOチャネルの微小化及びLET動作電圧の低減が期待できる.以上述べた三つの研究結果で,GO・rGO機能分離型LETデバイスを構築するための要素が揃えた.これまでの研究結果をまとめて,論文を二報投稿した,アメリカ真空学会(AVS),表面科学会,応用物理学会,関西表面技術フォーラムにおいて発表した.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は当初の予定通り進捗しており,大きな研究計画の変更はない.KMnO4/H+二次酸化により作製した蛍光性GOを用いて,機能分離型LETの作製へ進む.改良したコリメートVUV光パターニング技術により,多層GO膜の面内に発光領域とキャリア輸送領域を描画する.電子・ホールの注入と輸送特性を向上するために,仕事関数の異なる金属電極をソースドレイン電極にそれぞれ使用することと,自己集積化単分子膜によるrGO輸送層の修飾も検討する.作製したトランジスタ特性および発光特性を評価することで,GO/rGO-LETの発光機能を探索する.
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