研究課題/領域番号 |
16J10835
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
青木 虹造 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 乱流燃焼 / 直接数値計算 / 振動燃焼 / 希薄予混合火炎 / 熱工学 / 流体工学 |
研究実績の概要 |
旋回乱流予混合火炎における振動燃焼の発生・持続機構を明らかにするため,今年度は,支配的な変動エネルギー生成項の空間構造と動的特性を検討した.前年度までの研究において,変動エネルギー保存式に含まれる各項の寄与が評価されており,エントロピー変動と熱伝達変動および化学種変動による生成項の重要性が明らかにされている.今年度は,これらの生成項に対してDynamic mode decomposition(DMD)解析を実施することにより,空間構造と動的特性の検討を実施した.支配的なDMDモードの空間構造から,変動エネルギーの周期的生成に対して渦運動が密接に関与していることを明らかにした. 炭化水素燃料の乱流予混合火炎に対する三次元直接数値計算(DNS)として,高圧・希薄条件において一様等方性乱流中を伝播するメタン・空気乱流予混合火炎のDNSを実施した.Thin reaction zones (TRZ)およびBroken reaction zone (BRZ)におけるメタン・空気乱流予混合火炎の火炎構造を明らかにするため,反応進行変数によって条件づけられた熱発生率および主要な化学種の条件付き平均値を算出した.上記二つの条件に対する結果を比較した結果,BRZの火炎はTRZの火炎と比較して,層流火炎の結果との隔たりが大きいことが明らかとなった.この結果から,BRZの火炎においては,渦の予熱帯および反応帯への侵入によって,より活発な熱・物質拡散が行われていると考えられる. 本研究ではさらに,今年度の目標である実用炭化水素燃料の三次元DNSを実施するため,Correlated dynamic adaptive chemistry and transportを導入したDNSコードを開発した.現在はTRF・空気乱流予混合火炎の三次元DNSが実施されており,来年度以降も継続して行われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,当初の計画通りThin reaction zones およびBroken reaction zonesにおけるメタン・空気乱流予混合火炎の火炎構造を検討した.ただし,依然として乱流燃焼速度には上昇傾向が観察されるため,今後ともDNSを継続して行う.一方,より分子量の大きな実用炭化水素燃料のDNSについては,Correlated dynamic adaptive chemistry and transportを導入したDNSコードの開発に成功したため,計画通りDNSを開始することができた.反応機構としては111化学種416素反応を含むTRFのskeletal反応機構を用いており,乱流中を伝播するTRF・空気予混合火炎の燃焼特性について今後検討を行う予定である. 旋回乱流予混合火炎における振動燃焼の解析としては,当初の計画通り変動エネルギーに関する解析を実施した.変動エネルギー生成項に対するDMD解析により,変動エネルギー生成項の支配的な空間構造と動的特性を明らかにしたことで,旋回乱流予混合火炎の熱音響振動特性解明に向けた一定の進展が認められた. 以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,Thin reaction zones およびBroken reaction zonesにおけるメタン・空気乱流予混合火炎のDNSを継続するとともに,火炎構造に対するより詳細な解析に向けた解析プログラムの開発を行う.また,TRF・空気乱流予混合火炎の三次元DNSについても継続して行い,開発された解析プログラムを用いて,TRF・空気乱流予混合火炎の火炎構造の解明を行う.旋回乱流予混合火炎についても,火炎構造の解明を行うとともに,局所的な火炎構造と変動エネルギー生成との関係性についても検討する.また,これらの解析によって得られた結果に基づき,熱音響不安定性を評価するための安定性条件の構築と,振動燃焼抑制手法の提案を行う.
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