研究課題/領域番号 |
16J10846
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 恒太 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | IV族半導体 / GeSn / 高濃度ドーピング / レーザアニール |
研究実績の概要 |
III族およびV族元素を導入した非晶質GeSnに対し,水中PLA法によるドーパントの活性化と結晶化を誘起した.最大平衡固溶限が低く,偏析係数の小さいSbで高濃度ドーピングが達成されたのに対して,GaやAl,Ga,Pは固溶限が高く,偏析係数が大きいにもかかわらず,高いエネルギー照射ではキャリア濃度が低かった.この原因について硬X線光電子分光法により調査したところ,レーザ照射エネルギーの増大に従って,AsとSb以外のドーパントは濃度減少していることがわかった. この現象について,ドーパント原子の酸化物とレーザ照射雰囲気である水分子中の酸素原子のケミカルポテンシャルに注目した.AsとSb酸化物中のケミカルポテンシャルは,水中のそれに比べて高く,酸化されにくいこと,その他のドーパントはケミカルポテンシャルが低く,容易に酸化されることが示唆された.すなわち,レーザ照射に伴う酸化が,膜中のドーパント濃度を低下させることで,キャリア濃度を低下させることがわかった.この観点から,酸化を抑えるため,レーザ照射回数を減らした試料を作製したところ,ケミカルポテンシャルの低いGaにおいても1x10^20 cm^-3を超える高いキャリア濃度を得ることに成功した.
絶縁膜上にn型およびp型の多結晶GeSn薄膜を高品質に形成する技術を確立したため,新しい応用先として熱電変換デバイスを検討した.多結晶GeSn薄膜の室温における電気伝導率およびゼーベック係数を調査し,パワーファクタを評価した.多結晶にも関わらず,MBE法により成長させた単結晶GeSn薄膜と同等のパワーファクタがp型・n型両方で得られることが分かった.本手法を用いてp型とn型を直列接続した熱電変換素子を試作したところ,温度差10Kにおいて40pWの明瞭な熱電発電を観測した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私は,三次元積層回路の高性能化のために,Ge系混晶を活用したトランジスタが有望と考え,低温プロセスによる高濃度ドーピングの研究に注力した.私は,前年度までの成果を発展させ,各種ドーパントの振る舞いを系統的に調査し,ドーパント原子の酸化抑制が重要であることを見出した.これにより,n型のみならずp型においても高いキャリア濃度と移動度の同時実現を果たした.この結果は,絶縁膜上高駆動力トランジスタによるCMOS形成において,低温プロセスによる寄生抵抗低減を可能とする重要な成果である. これらの成果を精力的に発表しており,結果として2件の国内学会および4件の国際学会に結実させた。さらに,本年度中に2本の学術論文を発表した.
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今後の研究の推進方策 |
去年度までの成果として,水中パルスレーザアニール法を用いることでn型・p型両方の高濃度ドーピングが低温プロセスで実現できることが明らかとなった.本年度は,絶縁膜上高性能GeSn-MOSFETの形成を目指し,Sn導入による電子物性の変調効果を調査すると共に,デバイスの作製および動作実証を行っていく予定である.
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