マイクロ波領域の電磁波を用いてさまざまな有機半導体の電子伝導特性を評価可能な非接触伝導度測定法を開発した。化学ドープによる伝導度変調に対する複合電磁波分光法を設計し、ヨウ素ドープ下のP3HT中の電荷キャリアのスピン状態ならびにそれぞれのキャリアの移動度を計測に成功した。ドープの初期においてP3HTの内部にpolaronが形成していることがスピン密度の増加ならびにUV-Vis-NIR吸収測定により確認されたが、伝導度信号は微増に留まった。ドープの後期においては、スピン密度が極大を迎えたのち緩和時間と共に減少していることから、polaron pairの形成が進行していると判断された。伝導度信号はpolaron pairの成長に伴って大きく増加し、最終的に80-100 S cm-1に到達したことからpolaron、polaron pairの移動度がそれぞれ2 x 10^(-3)、0.6 cm^2/Vs程度であると見積もられた。この化学ドープを基盤とした新規なマイクロ波測定法CD-TRMCは広範な有機材料の評価にも有用であると期待される。 これと並行して、新規に合成されたC-AntPyとN-AntPy という2種類のCovalent Organic Framework (COF)の電気特性をマイクロ波伝導度測定法により評価した。これらのCOFはπ共役系の発達したピレンとアントラセンを共通の基本骨格とした異性体であるにもかかわらずドーパントに対する応答性が大きく異なることが示されている。難溶性であることが多いCOFは、一般に測定に足る薄膜の作成や単結晶化が極めて困難であるという問題を反応系中での直接薄膜化により解決し、その構造特異的な電気特性を評価した。
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