研究課題/領域番号 |
16J10865
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
和田 俊輔 京都大学, IPS細胞研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | miRNA / mRNA / スイッチ / BNA / 遺伝子発現制御 / 修飾型核酸 |
研究実績の概要 |
本年度、まず初めに、ヒトiPS細胞で活性が高いことを確認したhsa-miR-302-5pの標的配列を有するBNA修飾型オリゴ核酸を設計した。また設計したオリゴ核酸のmiRNA標的配列部位が二本鎖構造を採らないことをCentroidFoldで確認した。mRNAの合成において、当初予定していたCap analogが販売中止になっており、合成手法を探索し、その合成法を明らかにした。また、mRNAのキャップ構築に関して検討を行いVaccina Virus capping酵素が高効率にキャップ構造を構築できることを明らかにした。さらにmRNAへの2’-Fluoro-uridine (2’FU)の導入は、市販されるDuraScribe T7 transcription kitを用いることで達成されたが、RNA収量が天然のUを使う時と比べてやや低いことが問題となっている。一方、mRNAにおいて、自然免疫惹起性を低減し、発現量を飛躍的に向上させる新たな化学修飾体として1mPseudo-Uに注目した。現在、2’-FU及び1mPseudo-Uのどちらが、本研究に適しているか検討を行っている。次に、BNA修飾型オリゴ核酸とmRNAのライゲーションにおいて、主にT4 RNA ligaseを使用し、種々のライゲーション条件を検討したが、BNA修飾型オリゴ核酸を7mGの3’末端に結合させることができなかった。現在、Inverse DNAを用いたライゲーションを検討中である。 マウスにmRNAを投与するにあたり、デリバリー担体の評価を行った。Invivofectamine 3.0を用いて蛍光タンパク質をコードするmRNAをマウスに投与したが、標的臓器である肝臓で十分な蛍光強度を得ることができなかった。現在、2つの新規デリバリー担体とコードする遺伝子を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、ライゲーションに問題を抱えているが、これは当初の予想通りである。今後はInverse DNAを用いたライゲーション法など種々のライゲーション法を検討する。また、土台となるmRNAの合成やキャップ構造の構築などの基本的知見を明らかにできた。動物実験においては、デリバリー担体の選定を行った。さらには新規デリバリー担体であるInvivofectamine Rxを開発するThermo Fisher Scientific社と共同研究を結ぶことができた。以上のことから、研究の主たる目標である「生体内での臓器特異的な遺伝子発現制御」の実現に向け着実に研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はライゲーション法の確立し、環化mRNAの基本評価を行う。また、レプリコンRNAの開発を本格的に行う。さらにin vivo系において、肝細胞ガンのモデルマウス作成及びガン皮下移植モデルの作成とその病態変化を評価する。一方、ライゲーション法を確立することができなかった場合、以下の研究計画に移行する。 現在の計画では人工環化においてBNA修飾型オリゴ核酸とmRNAの3’末端のハイブリダイゼーションを用いているが、新計画では内在タンパク質を用いてmRNAを環化させる。具体的な方法としては、mRNAの5’末端と3’末端の配列で、臓器特異的に高発現するタンパク質の結合モチーフ(アプタマー)を構築させる。その結果、標的組織のみでmRNAの環化状態が強く維持される。そして、組織特異的なmiRNAによりこの構造を崩壊させ、環化状態を解除し、翻訳を開始させる。この計画を実行するにあたり、初めに肝臓特異的なタンパク質であるアルブミンが結合できる人工核酸修飾型アプタマーを現在、当研究室で開発を行っているセレクション法により選別する。その後は、当初の研究計画に則り実験を遂行する。
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