研究課題/領域番号 |
16J10921
|
研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
大西 康司 京都薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
キーワード | SARS 3CL プロテアーゼ / デカヒドロイソキノリン / 阻害剤 / 2価Pd触媒 |
研究実績の概要 |
申請者の所属研究室ではSARS 3CLプロテアーゼの基質配列に基づくペプチド性阻害剤とプロテアーゼとのS2サイトにおける疎水性相互作用に着目したデカヒドロイソキノリン骨格を核とした二環性縮環構造を有する阻害剤の開発がすすめられていた。しかし、このタイプの阻害剤では想定していた疎水性相互作用は認められるものの、S3サイト以降での相互作用の欠落による活性低下が避けられないことが判明した。そこで申請者はS3サイト以降に相互作用が可能な置換基を付与した新規デカヒドロイソキノリン型阻害剤の設計と立体選択的合成を推進してきた。 今年度は、まず前年度で確立した合成ルートに基づき、P3相互作用部位およびP1ヒスチジン誘導体が導入可能な鍵中間体の合成を行った。ついで、P3相互作用部位導入位の立体化学の影響を評価すべく、デカヒドロイソキノリン4位炭素に導入するアミノ基の立体化学を反転させた4位エピマー体の合成を実施した。すなわち、シャープレス不斉ジヒドロキシ化の配位子を変更することで逆の立体化学を有した感化前駆体を合成し、Pd触媒を用いた環化反応を行った。その結果、4位エピマー体では望みの立体化学を有した縮環型鍵中間体の生成効率が前年度までの合成とは大きく異なり、収率の大幅な向上が認められることを見出した。縮環構造形成後に生成するオレフィンと4位のアミド窒素原子との距離がアミド窒素の立体化学の際によって大きく異なることによるものと推測している。最後に、得られた4位エピマー型縮環鍵中間体にペプチド側鎖およびヒスチジン誘導体をそれぞれ導入し、目的の化合物であるデカヒドロイソキノリン型阻害剤の合成を達成した。本研究内容を日本薬学会第138年会で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、新たに開始した4位エピマー体の合成においては前年度合成していたものと比較して環化反応時の低収率の問題は見られず良好な収率で目的の鍵中間体を得ることに成功した。また得られた中間体に対し相互作用部位の導入をそれぞれ行うことで目的の化合物であるデカヒドロイソキノリン型阻害剤の合成を達成し合成ルートを確立することに成功した。この結果を基にすることで収率に難があった環化体を効率的に標的化合物まで誘導が可能であると考えている。また、元の立体化学のものに関しては低収率の問題は解決していないが、新たに生成してくる末端のオレフィンと相互作用部位に存在するアミド窒素原子の二点間の距離が影響していると推測できたため制御可能であると考える。すなわち、温度条件のコントロールおよびアミド置換基を嵩高い置換基へと変更することで収率を向上させることができると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
まず昨年度の研究で進めていた立体化学を有する阻害剤合成を進め、阻害活性評価を行うことで新規相互作用部位での立体化学の影響を評価する。あわせて、問題となっている環化反応について最適化の検討を行う。まず温度条件を検討し反応のコントロールを試みる。その後、改善がなければ置換基の検討を行う。 また活性評価の結果を受けて、構築した合成ルートを用いて順次構造活性相関研究を実施する。その際、プロテアーゼ活性中心と相互作用する官能基として、アルデヒドに加えこれまで検討されていなかったマイケル型官能基やチオアセタールあるいはワインレブアミドなどについても検討を加える。また、数十マイクロモル以上のIC50値を示した誘導体すべてについてプロテアーゼとの共結晶X線構造解析に基づく相互作用解析を実施し、構造最適化を効率よく進める。
|