研究課題/領域番号 |
16J10986
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
道根 百合奈 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 回折格子 / プラズマデバイス / 高強度レーザー / 高出力レーザー / 紫外レーザー / 光学素子 / 損傷閾値 / プラズマグレーティング |
研究実績の概要 |
本研究で開発中の、現状の光学素子では扱えない高強度レーザー光を直接制御する、新しいガス型光学素子の性能向上のため、今年度は以下のことを行った。
(1)高回折効率の達成。オゾンを数%含む酸素ガスと紫外レーザーを使用して生成した回折格子の、回折効率を向上させるためにシステムの改良を行った。具体的には、①初期ガス媒質濃度の上昇、②ガス流路と排気系の改良によるガス媒質密度の均一化 ③紫外レーザーの質向上 などにより、屈折率変調構造をある程度安定して生成できることがわかった。この結果、1cm2の範囲で密度変調を生成させたときの最も密度変調構造が均一である1mm2の領域を使用した時に、最大回折効率95%を達成することができた。
(2)屈折率変調構造生成モデルの構築。実際に高強度KJレーザーを制御する目的のためには、より広範囲(1cm2)の断面積で安定した屈折率変調構造を生成する必要がある。このために、屈折率変調生成原理の流体力学理論モデル構築を行った。この結果、紫外レーザーをガス中に周期的に照射することで、媒質中に音波と第二音波が誘起され、回折に十分な密度変調を得られていることがわかった。さらにこの理論モデルを実験的に実証するため、新しいレーザープローブ計測手法の開発を行った。この結果、紫外レーザーによって熱化したオゾン分子が周囲の酸素分子と衝突し、酸素分子ともども紫外レーザー非照射部に膨張することで、紫外レーザー照射領域と非照射領域との間に粗密が形成されていることが実験的に確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で開発中の、現状の光学素子では扱えない高強度レーザー光を直接制御する新しいガス型光学素子の性能向上のため、今年度は以下のことを行った。
(1)高回折効率の達成。オゾンを数%含む酸素ガスと紫外レーザーを使用して生成した回折格子の、回折効率を向上させるためにシステムの改良を行った。具体的には、①初期ガス媒質濃度の上昇、②ガス流路と排気系の改良によるガス媒質密度の均一化 ③紫外レーザーの質向上 などにより、屈折率変調構造をある程度安定して生成できることがわかった。この結果、1cm2の範囲で密度変調を生成させたときの最も密度変調構造が均一である1mm2の領域を使用した時に、最大回折効率95%を達成することができた。
(2)屈折率変調構造生成モデルの構築。実際に高強度KJレーザーを制御する目的のためには、より広範囲(1cm2)の断面積で安定した屈折率変調構造を生成する必要がある。このために、屈折率変調生成原理の流体力学理論モデル構築を行った。この結果、紫外レーザーをガス中に周期的に照射することで、媒質中に音波と第二音波が誘起され、回折に十分な密度変調を得られていることがわかった。さらにこの理論モデルを実験的に実証するため、新しいレーザープローブ計測手法の開発を行った。この結果、紫外レーザーによって熱化したオゾン分子が周囲の酸素分子と衝突し、酸素分子ともども紫外レーザー非照射部に膨張することで、紫外レーザー照射領域と非照射領域との間に粗密が形成されていることが実験的に確かめられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の2点を行う。
(1)紫外レーザーの照射パターンの改良。レーザープローブ実験により、縞の間隔によっては密度波中に高次モードが誘起され、これが密度波の均一性を崩している大きな原因であることも突き止めている。理論的には基本波モードで密度波が生成されている条件が最も密度波が均一となる条件であるので、紫外レーザーの照射パターン自身の改良を行う予定である。今までは干渉計によって縞構造を生成してきたが、これは光学面の精度に依存するためこれ以上の改善は見込めない。そのため改善策として、ガラスに超短パルスレーザーで縞構造を書き込み、これを紫外レーザーで媒質ガス領域に転写する光学系を構築する。これによってより安定で大面積な光学素子を生成する。
(2)新しい光学素子の設計。この光学素子は、オゾンガス領域に書き込む紫外レーザーの照射パターンの形状を変えることによって、入射光を収束させる、波面を補正するなどといった通常のレンズ、波面補正光学素子のようにも利用することが可能である。素子の大面積化とともに、その原理実証実験を行う。
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