昨年度、ロジウム触媒を用いたトリアゾールのヒドロホウ素化反応により、ホウ素アザエノラートの立体選択的合成を開発し、つづくsyn-選択的なアザアルドール反応へと展開した。またこの手法は、末端アルキンを起点とした効率的な合成法へと応用が可能であった。本年度、条件検討を行ったところニッケル触媒を用いた反応系の開発により、問題となっていた副反応を抑制し、対応するアルキル鎖を有するホウ素アザエノラート種が調製可能であることがわかり、反応多様性の拡張に成功した。総じて、ホウ素のルイス酸性と非カルボニル化合物である末端アルキンを利用した、高立体選択的な反応を開発した。 また、ビニル置換トリアゾール誘導体の環化多量化反応についても検討している。昨年度、連続的な不斉シクロプロパン化反応により、C3-対称性の環化三量化体が合成可能であることを見出していた。本年度は、更なるリンカーの検討ならびにこの環化三量化反応を利用した炭素同位体異性に基づく光学活性炭化水素の不斉合成ならびにその絶対立体配置を分光学的に直接観測する検討を行った。 最後に、ニトリル化合物を起点とした高立体選択的な反応系の開発を目指した。その際に、ニトリルとアジド化合物から容易に合成できるテトラゾール誘導体の反応を検討した。すると、系中でのスルホニル化反応によって環鎖互変異性が誘起され、対応するジアゾ化合物が生成することがわかった。つづく、ロジウム触媒の作用により脱窒素が進行し、α-アゾロジウムカルベン錯体へと変換できた。これは新規のドナー/アクセプター型のカルベン錯体であり、この活性種を用いた不斉シクロプロパン化反応及び開環異性化反応によって、対応する2-ピラゾリン誘導体を高い不斉収率で合成できた。このような新たなカルベン錯体の創生により、更なる高効率・高立体選択的分子変換反応の開発へと展開できることを期待している。
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