研究課題/領域番号 |
16J11154
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
東前 信也 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | ヘテロ原子 / 遷移金属触媒 / 増炭素反応 / 付加反応 / 一酸化炭素 |
研究実績の概要 |
硫黄やセレンといったヘテロ原子を含む化合物は、高機能性化合物として医農薬品や電子材料、合成中間体など幅広く利用されている。しかし、そのような化合物の合成には通常煩雑な多段階の反応が必要である場合が多く、生産コストや環境負荷の面で問題を抱えている。本研究では、遷移金属触媒を用いて不飽和結合に増炭素試薬とヘテロ化合物を一挙に導入し、複雑な機能性化合物を直截的に合成する新規反応の開発に取り組む。現在までに、コバルト触媒を用いて硫黄原子を含む機能性骨格を1段階で構築することに成功している。さらにヘテロ原子の反応性を熟知し発展させ、反応系に組み込むことにより、革新的な分子変換法を開拓することを目的に研究を進める。 本年度は、これまでの検討で得られた一酸化炭素に関する知見を基に、新たな反応系の構築に取り組んだ。したがって、一酸化炭素と等電子構造を有するイソシアニドを用いることで、新たな増炭素型ヘテロ原子導入反応を見出した。本反応はイソシアニドとジスルフィド由来の2種類の官能基をアルキンに対して同時に導入する反応である。従来では特殊な硫黄化合物を用いて同様の生成物が合成されていたが、本反応は汎用性の高い原料からの簡便な合成を可能とする。さらに、前年見出した硫黄系添加剤を用いてアルキン類と一酸化炭素からジラクトン誘導体を合成する手法について検討している。本年度は、このカルボニル化反応について収率の改善に取り組み、これに成功した。 また、金触媒の持つ高いπルイス酸性を利用することで、不活性アルケンに対して硫黄化合物がアンチマルコフニコフ型に付加する反応を達成した。不活性アルキンに対する遷移金属触媒による硫黄化合物の付加反応は、古くから困難な課題として存在しており、未だ十分な解決法は提案されていなかった。本反応は金の特性を活かすことで、この課題の克服に成功した。本成果をまとめ国際誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた硫黄以外の様々なヘテロ原子の導入を伴ったカルボニル化合物の直截的な構築については達成できていないが、イソシアニドを用いた硫黄官能基の導入を伴う反応に関しては、新たな反応系を見出すことができた。また、硫黄系添加剤を用いてアルキン類と一酸化炭素からジラクトン誘導体を合成する手法について、大きく研究が進展した。 これらのことから、研究は順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策については、現在見出している二種類の反応について検討を進め、反応機構の詳しい解析を含めて反応系の広がりを明確にする。このような研究を通して反応経路に関する知見を獲得し、今後の反応開発の指針とする。また、硫黄以外のヘテロ原子と一酸化炭素を同時に導入する反応に関しても引き続き検討を進め、増炭素型ヘテロ原子導入系における系統的な知見の獲得を目指す。
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