研究課題
生活習慣病である糖尿病は代謝調節能の障害のみならず、骨格筋の萎縮および筋力低下といった形態的、機能的損失を併発する。本研究は肥満2型糖尿病モデル動物による筋力低下の要因に細胞内Ca2+調節が関連していると仮説を立て検討した。2型糖尿病は高血糖、インスリン抵抗性、肥満などが複合的に生じた疾患であることから、まず筋力低下の規定因子を明らかにするため、ヒトの肥満型糖尿病に類似した症状を発現する自然2型糖尿病モデル動物のdb/dbマウスおよび高脂肪食の摂取によるインスリン抵抗性モデルマウスを用いた。まず、db/dbマウスは電気刺激による発揮筋力が低下していた。また、細胞内Ca2+は骨格筋の収縮、弛緩速度を規定するが、db/dbマウスでは収縮、弛緩速度が有意に遅延し、それに付随して、Ca2+関連タンパク質も低下していた。一方、高脂肪食摂取による肥満インスリン抵抗性モデルマウスは電気刺激時による発揮筋力がdb/dbマウスと同様に低下していた。しかしながら、インスリン抵抗性モデルマウスは骨格筋の収縮および弛緩速度には変化がなく、Ca2+関連タンパク質レベルにも差がなかった。以上の得られた知見から、高脂肪食性肥満モデルには細胞内Ca2+調節が障害されている可能性は低いことが示唆された。したがって、高血糖を誘発する糖尿病モデルとインスリン抵抗性モデルはそれぞれ別のメカニズムによる筋力低下の障害が生じていると推察している。高脂肪食性肥満モデルマウスを対象として得られた知見は国際学術雑誌に公表した(Eshima et al. Physiolo Rep. 2017)。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は2型糖尿病モデルおよびインスリン抵抗性モデルを用いて、これらのモデルの発揮筋力が著しく低下していること、糖尿病モデルのみに細胞内Ca2+調節の障害が生じている可能性があることを見出したため、おおむね順調に進展していると判断した。
今後は肥満2型糖尿病モデルを対象とした筋力低下の要因を詳細に解明していく。細胞内Ca2+調節はバイオイメージング法によって明らかにする。肥満2型糖尿病モデルでは、骨格筋の収縮、弛緩速度が遅延していた点やタンパク質レベルによる機能不全を見出しているため、細胞内Ca2+調節が障害されていることが予想できる。得られた知見から、介入研究への着手も検討する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
Physiological reports
巻: 5 ページ: -
10.14814/phy2.13250.
10.14814/phy2.13180.