本研究は肥満2型糖尿病による筋力低下の要因に細胞内Ca2+調節が関連していると仮説を立て検証した。また、代謝疾患の予防・改善に効果的である継続的な運動(運動トレーニング)による効果も合わせて実施した。肥満2型糖尿病モデル動物(以下db/db)を対象に、単離した骨格筋の電気刺激時の発揮筋力およびCa2+イメージング法による細胞内Ca2+レベルを測定した。db/dbはコントロールのdb/+よりも電気刺激時による筋力および細胞内Ca2+放出能が著しく低下していること、電気刺激時および薬理学的手法による細胞内Ca2+放出が著しく低下していることを明らかにした。さらに、実験動物用トレッドミル装置による6週間の運動トレーニングをdb/dbに実施させたところ、db/dbの全身性糖代謝能(糖負荷試験による血糖降下率)に変化はないものの、筋力の低下および細胞内Ca2+放出能の低下が改善されることを明らかにした。これらの結果は、肥満2型糖尿病による筋力低下は血糖調節(高血糖)が主要因ではなく、細胞内Ca2+放出の障害が糖尿病の筋力低下に大きく関与していることを示唆している。今後は、糖尿病が誘発する骨格筋機能低下と細胞内Ca2障害+の関連性及び分子機序の解明を行う。
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