今年度は、ビッグデータの効果的な解析手法の構築を目指し、従来の機械学習アルゴリズムの高次元化(多元数化)を行った。 近年の情報化社会においては、従来のアプリケーションでは処理しきれない巨大で複雑なデータの堆積物、いわゆるビッグデータが溢れており、それに対する効果的な解析手法が求められている。また、機械学習の分野においては、従来の実数型ニューロンに複素数や四元数を適用した、多元数ニューロンが提案されており、従来法よりも優れた学習能力を持つことが示されてきた。 我々はこれまでに、複素および四元数ニューロンを実数型ニューロ-ファジィ学習アルゴリズムに適用し、いくつかのベンチマークテストで良好な結果を得てきた。そこで今年度の研究では、未だ多元数化されていない学習アルゴリズムに対して多元数ニューロンを適用し、その利点を追求することを目的としてきた。 今年度は、深層学習に用いられている学習則と多元数ニューロンとの組み合わせについて研究した。この研究では、まず深層学習の基となったオートエンコーダと呼ばれる学習則に対し多元数ニューロンを適用した、複素および四元数オートエンコーダを提案した。次に、手書き数字画像を用いた符号化/復号化問題に従来法および提案法を適用し、提案法はネットワーク内のパラメータ数が少なく、実行時間の点で従来法よりも優れていることを示した。そして、その実験結果を基に手書き数字画像のクラス分類を行った。この実験では、0~9の手書き数字を10個のクラスにどれくらいの精度で分類できるかを見た。実験の結果、提案法のほうが従来法よりも分類能力が高いことが分かった。また、よりクラス数の多い問題に対する分類能力を調べるために、151クラスのデータセットにも各手法を適用した。この実験においては、従来法はほとんどの画像を分類することができなかったが、提案法は約90%の画像を分類することができた。
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