マウス骨格筋細胞株C2C12に対してXBP1-shRNAを導入してXBP1ノックダウン細胞を作製し、骨格筋分化に生じる影響について解析した。 XBP1をノックダウンすると筋管形成に著しい抑制が起こり、分化に不可欠なMRFsだけでなく、ミトコンドリア生合成に関わるPGC-1αや、MEF2ファミリー分子の遺伝子発現も抑制されることが明らかとなった。 XBP1をノックダウンした細胞では、分化過程のアポトーシス細胞死が過剰となることが明らかとなった。通常の筋細胞でも分化誘導後24時間~48時間にかけて死細胞の緩やかな増加が見られたが、分化誘導後24時間のXBP1ノックダウン細胞では死細胞数が対照区と比較して7倍近く増加しており、その後はむしろ減少した。また、XBP1ノックダウン細胞ではアポトーシスの実行因子であるCleaved-Caspase3発現が、分化誘導後12時間で対照区の2倍以上高くなっていた。この結果は、XBP1が骨格筋分化における細胞保護的な役割を担っていることを示唆している。XBP1ノックダウン細胞で確認されたアポトーシス促進が、ミトコンドリア生合成の抑制および、酸化ストレスによって生じている可能性を鑑み、XBP1ノックダウン細胞におけるミトコンドリア量、活性酸素種(ROS)の定量解析を行ったが、いずれも変化は認められなかった。 一連の解析によってXBP1は骨格筋分化に不可欠な因子であり、血清飢餓による分化誘導の際に細胞保護的な役割を担うことが明らかとなった。しかしながらXBP1が分化調節に寄与する具体的な下流シグナルおよび作用機序に関しては、さらなる検討が必要である。
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