水素生成型 CO 資化性菌は CO デヒドロゲナーゼ (CODH) と膜結合ヒドロゲナーゼ (ECH) の複合体によって、CO 酸化と水素生成を共役させ、エネルギー保存を行う。このシンプルでユニークな呼吸装置はゲノム上で遺伝子クラスターを形成しており、水素生成型CO資化性菌を特徴づけている。しかし、CODH 遺伝子は配列が多様であり、ユニバーサルプライマーの設計が困難であるため、水素生成型 CO 資化性菌の分子生態学的研究の大きな障壁となってきた。 本年度は水素生成型 CO 資化性菌の微生物生態系における機能解明を目指して研究を行った。まず、ゲノム情報が利用可能な全原核生物(約14万3千ゲノム)において、CODH-ECH 遺伝子クラスター保有株を探索し、6門25属43種の65ゲノムと未培養株6ゲノムを同定した。この中には CO 資化水素生成能が未報告の 17 属 24 種も含まれた。8億4千万配列が登録されているメタゲノムデータベースの配列をマッピングしても本遺伝子クラスターは検出されず、環境中の存在量は低いことが示唆された。また、CODH-ECH 遺伝子クラスター保有株の 16S rRNA 系統を利用した菌叢解析により、熱水環境におけるCO 資化性菌の探索を行った。九州および伊豆の泉源より採取した、100の堆積物試料における菌叢解析で得られた配列を解析した結果、幅広い泉源において Firmicutes 門の潜在的な水素生成型 CO 資化性菌が 0.1% 未満の相対存在量で分布することを初めて明らかにした。低い相対存在量のため、計画当初のメタゲノム解析が困難であることが明らかになったが、本特別研究員は CODH 遺伝子を標的とした複数のプライマーセットを設計し、多様性解析手法の基盤を確立した。
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