研究課題/領域番号 |
16J11337
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
名畑 豪祐 和歌山大学, システム工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 多光源レンダリング法 / 誤差推定 |
研究実績の概要 |
今年度は、写実的な画像を効率的に生成する手法として注目されている多光源レンダリング法について研究を行い,その成果を論文として発表した. 多光源レンダリング法とは,多数の仮想的な点光源(Virtual Point Light,以降VPLと略す)をシーン中に設置し,VPLの寄与を計算することにより,視点方向に出射する輝度を計算する手法である.この手法を用いて写実的な画像を生成するには大量のVPLが必要になるため,すべてのVPLの寄与を計算するのは計算コストが高く,画像生成に時間がかかるという問題がある.この問題を解決するため,少量のVPLをサンプリングし,サンプリングされたVPLの寄与から,視点方向に出射する輝度を推定する手法が多く提案されている.これらの手法では,少量のVPLの寄与のみを計算するため,高速に画像を生成することができる.しかしながら,これらの手法では,推定による誤差を制御することができないという問題がある.そのため,誤差の小さい画像を生成するには,VPLのサンプリング数などのパラメータ調整の試行錯誤が必要であり,ユーザは多大な負担を要する.この問題を解決するため,申請者は,輝度の推定値が従う分布を導出し,推定値の誤差を制御する方法を提案した.これにより,ユーザはパラメータ調整の試行錯誤なしで,高速に写実的な画像を生成することができる.なお本研究は,国際論文誌『Computer Graphics Forum』に掲載されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの多光源レンダリング法に関するほとんどの研究で,VPLサンプリングによる輝度の推定値の誤差制御は行われてこなかった.そのためユーザは,VPLのサンプリング数などのパラメータ調整の試行錯誤が必要であり,多大な負担となっていた.誤差制御を試みる手法も存在するが,ヒューリスティックに基づく手法であり,正確な誤差制御はできなかった. 今年度は,これらの問題を解決するため,まず推定値が従う分布の定式化を行った.次に定式化された結果をもとに,効率的な画像生成フレームワークを考案した.申請者の提案した手法は,正確に推定値の誤差制御が可能であるため,ユーザはパラメータ調整の試行錯誤が不要である.この成果を論文としてまとめたものが,難関国際会議であるPacific Graphics 2016に採択,またComputer Graphics Forum誌に掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては,今年度の成果を発展させ,金属のような反射特性に鋭い指向性を持つ材質や,雲のような関与媒質を含む複雑なシーンに適したフレームワークの考案が挙げられる. 今年度は,VPLを用いたレンダリングに関して研究を行ってきたが,反射特性に鋭い指向性を持つ材質や,関与媒質を含む複雑なシーンをレンダリングする場合,VPLを用いたレンダリングは極めて非効率となる.この問題は,VPLの代わりに,VPLを拡張した仮想的な球光源(Virtual Spherical Light,以降VSLと略す)などを用いることで解決できるが,申請者が考案したフレームワークはVPLを対象としたものであり,VSLに適用することができない.複雑なシーンはレンダリングに時間がかかるため,パラメータ調整の試行錯誤によるユーザの負担は非常に大きい.そのため,VSLに適したフレームワークを考案し,パラメータ調整なしで写実的な画像を生成する手法の開発が必要である.
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