研究課題/領域番号 |
16J11413
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
錦織 達人 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | Hospital volume / 食道切除術 / 手術死亡率 |
研究実績の概要 |
食道切除術は高難度な手術術式であり、病院あたりの年間の食道切除術件数であるHospital volumeと術後死亡率との関連性が欧米諸国を中心に検討されてきた。そして、経験が少ないLow-volume施設の術後死亡率は、経験が豊富なHigh-volume施設と比較して高率であることが報告されてきた。しかし、Low-volumeを定義するカットオフ値が恣意的であったり、交絡因子が十分に調整されていなかったりと過去の報告における研究手法の質の低さが近年、指摘されている。また、食道切除術を施行した全患者に占めるリスク因子を有する患者の割合は各施設によって異なるため、施設間の手術成績を公正に比較するためには、リスク因子の影響を調整する必要がある。 申請者らはNational Clinical Database (NCD)を利用し、食道切除術のHospital volumeがリスク調整死亡率に与える影響を明らかにすることを研究の目的とした。2011年から2013年に食道切除術を施行し、NCDに登録された症例を対象とした。評価項目は30日死亡と手術死亡で、ロジスティックモデルでリスク因子とSurgeon volumeの影響を調整した。解析対象は988施設で施行された16556例の食道切除術であった。Hospital volumeは30日死亡、手術死亡 と関連した。以上より、日本において食道切除術のHospital volumeと術後死亡率は関連すると結論した。論文「Impact of hospital volume on risk-adjusted mortality following oesophagectomy in Japan」を作成し、British Journal of Surgery誌に投稿し、掲載された(2016;103(13):1880-1886)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
National Clinical Database (NCD)を利用し、食道切除術のHospital volumeがリスク調整死亡率に与える影響を明らかにした。論文を作成し、British Journal of Surgery誌へ投稿を行い、アクセプトされた。京都大学医学研究科へ学位を申請し、審査公聴会の結果、博士(医学)の学位論文として価値あるものと認められ、学位を授与された。 また、厚生労働省が保有するナショナルデータベース(NDB)を利用した研究を実施するため、京都大学医の倫理委員会で承認を得て、厚生労働省に申請書を提出した。有識者会議での検討の結果、NDB利用の承認を得た。現在は、厚労省からデータセットが送付されてくるのを待っている状況である。平成29年度にはデータセットを受領し、解析を開始する。 そして、NCDを利用した新規研究課題申請書を作成し、日本食道学会へ提出したが、承認を得ることはできなかった。平成29年度に再申請を行う予定で検討を進めている。 以上より、概ね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
NDBを利用した「食道切除術の周術期医療費の分析」研究は、平成28年7月27日付で厚労省より研究実施が許可された。しかし、2017年4月にあっても、厚労省からデータセットが送付されてくるのを待っている状況であり、厚労省に問い合わせを実施している。担当者によると順番にデータセットを作成しているとのことだが、省内の利用が優先されるため、研究者へのデータセット送付は遅くなるとのことであった。当方としては方策はなく、待機する他ない状況にある。平成29年度中には研究を開始できるものと考えている。 NCDを利用した新たな研究「地域包括ケアシステムにおける食道切除術の提供体制の検討‐NCDを利用した機能分化シミュレーション‐」について申請書を作成し、日本食道学会へ提出した。しかし理事会での検討の結果、本研究課題は承認を得られなかった。平成29年度に再申請を行う予定で検討を進めている。もし、来年度も承認を得られない場合は、NDBを利用したシミュレーションを実施する研究計画を作成し、厚生労働省へ提出を行う対応策を検討している。
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