研究課題/領域番号 |
16J11427
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
望月 秀人 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 多孔性金属錯体 / ラジカル重合 / シークエンス制御 / 高分子超薄膜 |
研究実績の概要 |
ラジカル共重合では反応性に富むラジカルを成長活性種とするため、反応時にモノマー選択性を付与することが難しく生成共重合体のシークエンスの制御は非常に困難である。本研究では多孔性金属錯体の周期骨格上にモノマーを共有結合によって固定し、これをテンプレートにラジカル共重合を行うことでシークエンス制御共重合体が得られることを示した。前年度に[Cu(5-vinylisophthalate)] (1)の一次元細孔を用いたアクリロニトリル(A)とスチレン誘導体(S)のラジカル共重合を行い、生成共重合体は三連子としてAAS、AAA、ASA配列を有することがNMR測定より判明していた。本年度は1の内部に包摂されるAの量を調整し、重合前のモノマー組成を変えて共重合を行った。すると生成共重合体のA/S組成がいずれもA:S=3.0:1.0に非常に近い値を取り、SAAAという繰り返しシークエンスを有することが強く支持された。 加えて本年度は、高度な構造規則性を有する高分子超薄膜体の合成が困難であることにも着目し、二次元状ナノ空間を有するpillared-layer型PCP、[Ni(Hbtc)(bpy)] (2; btc=1,3,5-benzenetricaboxylate,bpy=4,4'-bipyridine)をテンプレートに用いた、高分子超薄膜体の制御合成法の開発を行った。まず2の細孔内にスチレン、架橋剤、ラジカル開始剤を導入し、架橋ラジカル重合を行った。PCPから単離した薄膜体は0.8 nmの膜厚を持つことが確認され、これは2の二次元状ナノ空間の厚みに相当するものであった。またメタクリル酸メチル、酢酸ビニルを用いた場合でも同様の膜厚を有する薄膜体が得られ、本手法の汎用性が示された。さらにナノ空間の厚みを大きくしたところ薄膜体の膜厚もその分増加し、薄膜体の構造を合理的に制御可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はPCPの周期骨格構造を利用して得られた共重合体が、SAAAという繰り返し配列を有しているという明確な証拠を示すことが出来た。さらにPCPを用いたシークエンス制御二次元高分子合成に向けて、その前段階となる実験が成功したことから、研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は二次元状ナノ空間を有するPCPの内部で架橋ラジカル重合をすることにより、超薄膜ビニル高分子が得られることを見出した。ここで得られた知見を基に、今後はPCPを用いたシークエンス制御二次元高分子の合成に取り組む。例えば、まずPillared-layer型MOFである[Ni(Hbtc)(L)] (btc=1,3,5-benzenetricarboxylate, L=ピラー配位子)の二次元状ナノ空間内にて、ピラー配位子上に架橋反応サイトを組み込む。これによって架橋サイトが二次元空間内に規則配列した反応場が形成されるので、次に多官能性ゲストモノマーとのホスト-ゲスト架橋重合を行い、二次元架橋重合体を得る。PCPから単離した生成物に対しては各種分光法等によりキャラクタリゼーションを行う。 またPCPのナノ細孔を反応場とした制御高分子反応も行う。一次元細孔を有するPCPに高分子鎖を包摂した後にPCP-高分子間あるいは高分子-高分子間で反応を行い、シークエンス制御高分子の合成を行う。
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