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2016 年度 実績報告書

ヒストン脱メチル化酵素のタンパク質翻訳後修飾を基盤としたエネルギー消費機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16J11548
研究機関東京大学

研究代表者

阿部 陽平  東京大学, 先端科学技術研究センター, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2019-03-31
キーワード熱産生 / ヒストン脱メチル化酵素JMJD1A / ベージュ化 / ベージュ脂肪細胞 / 寒冷刺激 / タンパク質複合体 / H3K9 / PRDM16
研究実績の概要

始めにJMJD1A-Ser265のアラニン変異体ノックイン(KI/KI)マウスの表現型解析を行った。KI/KIマウスは、JMJD1Aノックアウトマウスと同様に、寒冷環境下では低体温になることが示された。白色脂肪細胞の褐色脂肪細胞らしさの獲得にJMJD1A-Ser265のリン酸化が関与するか否かを明らかにするために、長期寒冷刺激を与えたKI/KIマウスの白色脂肪脂肪組織を解析した。その結果、KI/KIマウスの白色脂肪組織では、ベージュ化関連遺伝子の発現誘導が抑制されていることが明らかになった。
ベージュ脂肪細胞を用いて、共免疫沈降を行ったところ、JMJD1AはSer265のリン酸化依存的にPRARγと結合するばかりでなく、PRDM16およびその結合タンパク質であるPGC1αと複合体を形成することが明らかになった。また、ベージュ化誘導に必要な長期寒冷刺激はJMJD1A-Ser265のリン酸化を持続させるため、リン酸化依存的なJMJD1Aの標的遺伝子への局在も安定化する。そこで、JMJD1Aが標的遺伝子上に長期局在できるために、JMJD1AによるH3K9脱メチル化反応が進み、ベージュ化関連遺伝子の転写をONにし続けるのではないかと仮定した。そこで、H3K9me2抗体を用いたChIP-qPCRを行ったところ、白色脂肪細胞のベージュ化が誘導される過程でベージュ化関連遺伝子のH3K9me2レベルが次第に減少することが明らかになった。加えて、S265A-JMJD1Aベージュ脂肪細胞では、ベージュ化関連遺伝子の発現誘導が抑制されることと相関し、H3K9me2レベルも高値を示した。これより、長期寒冷刺激は、JMJD1A-Ser265のリン酸化(step 1)およびベージュ化関連遺伝子の脱メチル化(step 2)を介して、エピジェネティックメモリーとして記録されることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本申請 1 年目で、1) 長期寒冷刺激がJMJD1A-Ser265のリン酸化を介して JMJD1A-PPARγ-PRDM16複合体を形成する。2) 持続したJMJD1A-Ser265のリン酸化はベージュ化関連遺伝子の発現を誘導する。3) リン酸化JMJD1Aの標的遺伝子への局在とH3K9脱メチル化はベージュ化誘導に必須である。4) 個体レベルでJMJD1A-S265Aはベージュ化の抑制とインスリン感受性の低下をもたらすことを明らかにし、現在、論文を投稿中であるため。

今後の研究の推進方策

タンパク質複合体を包括的に同定できるプロテオミクス解析技術の確立に関しては、始めに、マウス不死化褐色脂肪細胞にFlagタグを付与したヒトJMJD1A(Flag-hJMJD1A 野生型あるいはS265A変異体)を過剰発現させた細胞を作製した。これら細胞を用いて、ヒト JMJD1Aタンパク質複合体のタンデムアフィニティー精製とショットガンプロテオミクス解析を行い、JMJD1A-Ser265リン酸化依存的に結合する脱リン酸化酵素を同定している。この脱リン酸化酵素の阻害が、JMJD1A-Ser265のリン酸化を維持し、ベージュ化誘導を促進させるか否か明らかにすることは次年度の研究課題とする。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 図書 (1件)

  • [図書] 糖尿病学20162016

    • 著者名/発表者名
      酒井寿郎、阿部陽平、松村欣宏、稲垣毅
    • 総ページ数
      174
    • 出版者
      診断と治療社

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公開日: 2018-01-16  

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