研究課題/領域番号 |
16J11581
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
コ シチン 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | フォトニック結晶 / 半導体 / 光配線 / 光検出器 |
研究実績の概要 |
近年、半導体に対する多機能・高性能化に対する要求が高まり、高度なシステム機能を詰め込んだSiP (System in Package) が盛んに研究されている。SiPにおいては、従来の金属配線による伝送遅延・発熱等の問題からその性能が制限されている。この問題を解決するため、申請者はSiP上配線として、電気配線の替わりに光配線技術の導入を提案する。 SiP上光配線における指標として、「光源」「光伝送路」「受光素子」の一連の光コンポーネントをパッケージ上に構築し、10 fJ/bit以下の消費電力で伝送を行うことが必須とされている。受光器において、一般的に、後続の電子回路によって十分な帯域幅を持って識別可能な電圧信号を生成するために、TIAなどの増幅器が必須となる。これらの増幅器はpJ/bitオーダーのエネルギーコストを負うため、光インターコネクションの主な利点である低消費電力化に相反する。しかしこの問題は、電気増幅器の代わりに受光器を高負荷抵抗と組み合わせることによって克服することができる。特性計算の結果、受光器に10 kΩ以上の負荷抵抗を接続し、接合容量を1fF未満にすることで、10 GHzを超えるカットオフ周波数、およびfJ/bitオーダーの入力光信号に対して数百mVの出力電圧を得ることが可能であると見積もられた。 本研究の一年目の成果として、3次元ポリマー細線を用いる光伝送の研究に取り組む前に、SiP上光配線に向けた小型・極低消費電力の受光器を実現する目的から、スローライト増強型の半導体薄膜受光器の設計を行った。フォトニック結晶構造を用いることで、受光器の吸収長を5.5μmまで短縮できることが分かった。素子長短縮による寄生容量の低減により、高負荷抵抗と接続するのみで電子回路の動作を保証するのに十分な電気信号が得られ、増幅回路を必要としないため消費電力の大幅低減が見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
システムインパッケージ(system in a package: SiP)上光配線に向けた小型・極低消費電力動作受光器として、以下の研究成果を挙げた。
(1) 3次元有限差分時間領域法を用いて、スローライト増強型の半導体薄膜受光器の設計を行った。その結果、群速度35のエアブリッジ型フォトニック結晶構造を用いることで、受光器の吸収長を5.5 μmまで短縮できることが分かった。素子長短縮による寄生容量の低減により、高負荷抵抗と接続するのみで電子回路の動作を保証するのに十分な電気信号が得られ、増幅回路を必要としないため消費電力の大幅低減が見込まれる。素子の遮断周波数も約20 GHzであり、光配線の要求性能を満たすのに十分な値が得られた。(2)フォトニック結晶型薄膜受光器の試作を行い、作製プロセスを確立した。
以上の研究進捗状況から、次年度ではこの超小型受光器の作製と特性評価を行うと共に、光源と受光器間を低損失な3次元ポリマー光細線で繋ぎ、SiP上極低消費電力信号伝送が実現できると見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までにシステムインパッケージ上光配線に向けたフォトニック結晶型薄膜半導体受光器の設計及び作製プロセスの確立を行った。今後は設計した構造に基づいた作製を行い、受光器単体の特性評価を行う。また、二光子加工技術を用いることで、半導体光源と受光器を3次元ポリマー光細線で繋ぎ、光リンク構造における信号伝送特性を明らかにする。
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