研究実績の概要 |
Rab ファミリータンパク質は, オルガネラ間を行き来する輸送小胞の出芽・移動・融合を制御する中心的因子として, 個々の細胞機能のみならず生体の高次機能調節にも重要な役割を果たしている。Rab35は、線虫における卵黄受容体 (LDL受容体)のリサイクリング経路の選択的輸送制御因子として同定された。それに加えて、細胞分裂、アクチン重合、神経発生、神経突起伸長、エクソソーム分泌や免疫シナプス形成など様々な機能をもつ多機能因子であることが報告されている。また、その機能不全はコレステロール代謝、神経変性疾患及び癌に関与することが示唆されており、哺乳動物個体における生理機能の解明は生物学的・医学的に重要な知見を提供するものと期待される。そこで、本研究課題では、Rab35 欠損マウスを作製し, Rab35による多様な細胞機能の制御機構及び哺乳動物個体における生理機能の解明を目指す。 本年度は、全身性Rab35欠損マウスの胚発生を詳細に解析し、Rab35ホモ欠損胚は発生初期において形態異常を示すことを見出し、Rab35が哺乳動物の発生に必須の因子であることを明らかにすることができた。また、Cre-loxPシステムにより神経系特異的Rab35欠損マウス (Rab35flox/flox;Nestin-Cre)および肝細胞特異的Rab35欠損マウス (Rab35flox/flox;Albmin-Cre)を作製した。出生直後のこれら両組織特異的Rab35欠損マウスでは、脳もしくは肝臓形態に明らかな異常は見当たらなかった。現在、Rab35欠損が組織形態と機能に与える影響についての解析を進めている。
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