研究課題/領域番号 |
16J11772
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
藤田 博仁 群馬大学, 大学院理工学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 機能性フィブリンゲル / 生体組織接着剤 / 核酸アプタマー / 抗がん剤 |
研究実績の概要 |
フィブリンは生体組織接着剤として、創痕の手当てなどに用いられており、新たなフィブリン加工技術の開発により、生体組織工学や再生医療などへの応用が期待される。本研究では、まず、増殖抑制効果について詳細な検討をした。抗がん剤であるカンプトテシン誘導体(CPT1)結合性人工核酸アプタマー(CMA)を連結させたTBA(CMA連結TBA)をSOEF現象(selective oligonucleotide entrapment in fibrin polymers)により作製し、CPT1/CMA連結TBA複合体を介したCPT1のフィブリンゲルへの導入を検討した。作製した機能性フィブリンゲルにトラップされたCPT1を、逆相高速液体高速クロマトグラフィー(RP-HPLC)を用いて定量したところ、CMA連結TBAを含む場合は、約90%がトラップされていることが示唆された。 この作製したCPT1をトラップした機能性フィブリンゲルを用いてHeLa細胞における細胞増殖抑制効果を検討した。HeLa細胞に機能性フィブリノーゲンの材料となるCPT1-CMA連結TBA-トロンビン複合体、フィブリノーゲンを加えて48時間培養させた。培養後、細胞の生死を判断するためにエステラーゼにより活性化される蛍光試薬を用いて蛍光顕微写真を撮影した。その結果、CPT1-CMA連結TBA-トロンビン複合体およびフィブリノーゲンの共存下において顕著な効果を確認した。一方で、1つでも因子が欠損している場合は、顕著な効果が得られなかった。これは、CPT1がフィブリンゲルに内包されることで細胞とフィブリンゲル接触面の薬剤濃度が高まったためと考察される。また、CPT1の濃度について検討した結果、単独で使用したときよりも100倍程度薄くできることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標通り、SOEF現象で作製したカンプトテシン誘導体が、フィブリンゲルにアプタマーを介して取り込まれているか実証することができた。また、抗がん剤を導入した機能性フィブリンゲルの細胞増殖抑制効果について検証し、in vitroでの効果を確認することができ、さらに、これまで難しかった細胞の生死を見分ける明確な方法を見出すことができたことなどが理由として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
CPT1導入機能性フィブリンゲルの増殖抑制効果を異なるヒト培養細胞でも検証する。さらに、増殖抑制あるいは増殖促進効果を狙って細胞成長因子レセプターをターゲットにしたSELEX法による修飾アプタマーの取得を行う。また、それらを連結させたアプタマーの作製し、SOEFの効果確認を蛍光偏光測定法やRP-HPLCを用いて評価を行う。さらに、これらの連結アプタマーを用いて機能性フィブリンゲルを作製し、細胞に及ぼす効果について研究を進めていく予定である。
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