研究実績の概要 |
平成28年度の研究として,研究目的の1つである「安定同位体を用いたアスリートの1 日の水分摂取量の基準値づくり」の一部として,体重階級制競技種目であるレスリング選手10名のデータを用いたエネルギー代謝及び水分代謝の学術論文を作成した.この学術論文にて1日の総エネルギー消費量が4283 ± 590 kcal/day,1日の水分代謝が4.61 ± 0.73 L/day,身体活動レベルが2.6 ± 0.3であることを明らかにした.これらはレスリング選手のトレーニング期としての初めてのデータであり,栄養指導の際にこれらのデータが寄与すると考えられる.この研究は現在も進行中であり,平成29年度には更に身体組成,エネルギー代謝,パフォーマンス項目のデータを8名追加した検討を行う予定である. また,研究目的の2つ目である「安定同位体を用いた減量後のリフィーディングによる基質の取り込みとその消費のタイミング, 食事構成比の影響を検討する」に関して,先だって減量中の食事構成比(たんぱく質、脂質、糖質)を考慮し,高炭水化物食群(5名)と低炭水化物食群(6名)の2群に分けた減量効果を比較した研究内容のデータ解析が進行している. 加えて,米国の研究室で従来の安定同位体比質量分析を基準としたCavity ring-down分光法の妥当性の検証を行った. 7名の対象者に対し, 複数の条件下(5試行)のもとで, 体液(血液, 唾液, 尿)に含まれる安定同位体比の再現性と正確性の分析を行っており, 現在は取得した血液, 唾液, 尿サンプルの分析中である. この研究により, サンプル間と条件間, Cavity ring-down分光法の妥当性が決定されることにより, アスリートの唾液を用いたスピーディなサンプル取得と分析が行うことができると考えている.
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