• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実績報告書

ライソゾーム病に対する脳移行性シクロデキストリン類の有用性評価

研究課題

研究課題/領域番号 16J11970
研究機関熊本大学

研究代表者

前田 有紀  熊本大学, 薬学教育部, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2019-03-31
キーワードライソゾーム病 / シクロデキストリン / コレステロール / GM1ガングリオシド / デリバリー
研究実績の概要

ライソゾーム病の中でも、ニーマン・ピック病 C 型 (NPC) は細胞内にコレステロールが蓄積することで、肝脾腫や重篤な神経症状を呈する難治性疾患である。近年、NPC 治療薬として、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン (HP-β-CyD) の臨床試験が開始されているものの、CyDs は細胞内に取り込まれにくいため、大量投与が必要であり、副作用が懸念される。
ここで、ラクトースは、肝臓に高発現するアシアロ糖タンパク受容体のリガンドであり、肝実質細胞に取り込まれることで、NPCの症状の一つである、肝腫大に対して治療効果を示すことが期待される。さらに、近年グルコースを導入したナノ粒子が脳内に送達可能であることが報告されたことから、糖やアミノ酸のような必須分子を介した脳への薬物移行に注目が集まっている。
そこで本研究では、CyDを肝細胞および神経細胞に積極的に導入するために、コレステロールとの相互作用が強いβ-CyD にラクトース (Lac) を導入した Lac-β-CyD を調製し、NPC に対する治療効果を検討した。その結果、NPC モデルマウスに対する Lac-β-CyD の皮下投与は、肝腫大を軽減可能であることが示唆された。
そこで、健常マウスにLac-β-CyD を皮下投与後、イメージング装置 IVIS にて臓器分布を調べてところ、速やかに肝臓へ移行することが示唆された。また、大変興味深いことに、Lac-β-CyD は一部脳へ移行可能であることが示唆された。さらに、健常マウスに高用量の Lac-β-CyD を皮下投与後、安全性評価を行ったところ、HP-β-CyD と比較して、顕著な肺障害を示さず、Saline 投与群と比較して、血液生化学検査値に著しい変化がみられなかったことから、安全性に優れる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

交付申請書記載の研究計画において、本年度は、(1) 脳移行性 CyDs 誘導体の構築、(2) CyDs および脂質成分の細胞内動態、(3) 脂質の網羅的解析、(4) マイクロアレイ解析を行うことになっており、(1) (2) に関しては当初の予定以上に進展している。
これまでに、ラクトースを修飾した Lac-β-CyD の合成に成功しており、大量合成後、分子量および構造を TLC、1H-NMR、MALDI-TOF-MASS にて評価することで、調製方法を確立した。また、蛍光ラベル化した Lac-β-CyDを調製し、NPC 様肝細胞への取り込み能のみならず、Lac-β-CyD の臓器分布を評価することが出来た。今回、健常マウスに蛍光ラベル化 Lac-β-CyD を皮下投与後、速やかに肝臓へ移行すること、さらに、Lac-β-CyD は一部脳へ移行する可能性が示唆された。以上のことから、今後は脳移行および神経細胞への取り込みについて、詳細に検討を行う予定である。
さらに、当初の予定から大幅に進展し、 Lac-β-CyD は、NPC モデルマウスに皮下投与後、肝腫大を軽減可能であることを明らかにした。また、安全性評価に関しても、健常マウスに高用量の Lac-β-CyD を皮下投与後、肺障害および血液生化学検査値を評価したところ、Lac-β-CyD は NPC 患者に対して臨床試験が行われている HP-β-CyD と比較して、安全性に優れる可能性が示唆された。
しかしながら、脂質の網羅的解析およびマイクロアレイ解析に関しましては、現在、評価系を確立した段階であり、今後は、Lac-β-CyD を処理したサンプルを用いて、コレステロールおよびその誘導体の網羅的定量やマイクロアレイ解析を行い、Lac-β-CyD の作用機序を明らかにする予定である。

今後の研究の推進方策

本年度の検討において、Lac-β-CyD は NPC 様肝細胞内に積極的に取り込まれることで、 NPC の肝腫大に対して治療効果を有していること、HP-β-CyD と比較して安全性に優れていることを見出した。また、大変興味深いことに、Lac-β-CyD は皮下投与後、一部脳に移行する可能性が示唆された。以上のことから、Lac-β-CyD は NPC の神経症状治療薬としての可能性が期待される。
そこで、平成 30 年度は、NPC の神経症状に対する Lac-β-CyD の治療効果を明らかにするために、NPC モデルマウスおよび NPC 様神経細胞を用いて、神経細胞への取り込み能や脂質蓄積減少効果、神経症状の改善効果を評価する。さらに、Lac-β-CyD の作用機序を解明するために、コレステロールとの相互作用解析や脂質の網羅的解析を行うとともに、オートファジーなどの細胞恒常性や遺伝子発現に与える影響を評価する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018 2017

すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [学会発表] Evaluation of lactose-appended β-cyclodextrin as a novel therapeutic agent for hepatosplenomegaly of Niemann-Pick Type C disease2018

    • 著者名/発表者名
      Y. Maeda, K. Motoyama, T. Higashi, Y. Yamada, Y. Ishitsuka, Y. Kondo, T. Irie, T. Era, H. Arima
    • 学会等名
      KEY Forum 2018
    • 国際学会
  • [学会発表] ニーマン・ピック病 C 型治療を企図したラクトース修飾シクロデキストリンのin vivo 評価2018

    • 著者名/発表者名
      前田有紀、西山怜奈、本山敬一、東大志、石塚洋一、近藤悠希、入江徹美、江良択実、有馬英俊
    • 学会等名
      日本薬学会138年会
  • [学会発表] ジメチル-α-シクロデキストリンを用いた GM1 ガングリオシドーシスの脂質蓄積軽減効果2017

    • 著者名/発表者名
      前田有紀、本山敬一、東 大志、中潟直己、香月博志、入江徹美、江良択実、有馬英俊
    • 学会等名
      日本薬剤学会第32年会
  • [学会発表] Ameliorating Effects of Methylated-Cyclodextrins on GM1-ganglioside Accumulation in Cells Derived from GM1-gangliosidosis2017

    • 著者名/発表者名
      Y. Maeda, K. Motoyama, T. Higashi, N. Nakagata, H. Katsuki, T. Irie, T. Era, H. Arima
    • 学会等名
      19th European Carbohydrate Symposium (EUROCARB 2017)
    • 国際学会
  • [学会発表] ニーマン・ピック病 C 型の肝脾腫に対する肝標的ラクトース修飾β-シクロデキストリンの有用性評価2017

    • 著者名/発表者名
      前田有紀、西山怜奈、本山敬一、東大志、石塚洋一、近藤悠希、入江徹美、江良択実、有馬英俊
    • 学会等名
      第34回シクロデキストリンシンポジウム
  • [学会発表] ライソゾーム病の脂質蓄積に及ぼすシクロデキストリン類の有用性評価2017

    • 著者名/発表者名
      前田有紀、西山怜奈、本山敬一、東大志、中潟直己、香月博志、入江徹美、二木史郎、江良択実、有馬英俊
    • 学会等名
      第34回シクロデキストリンシンポジウム
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi