研究課題/領域番号 |
16J11980
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
杉山 歩未 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | マルチエージェント / 分業創発 / 継続協調巡回問題 / 変化への柔軟性 / 持続可能性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで研究されてきた(1)自律的行動決定(2)「個」と「個」の協調(3)集団としての協調・集団間の協調の、相互作用に着目し、それぞれのメカニズムをマクロな視点で統合することで変化に柔軟・低コスト・高効率な自律分散システムを実現するための基本メカニズムを解明することであり、本年度は計画の項目(3)集団としての協調・集団間の協調メカニズムの解明、(4)変化に柔軟で高効率なシステムの実現を行った。 特に項目(4)変化に柔軟で高効率なシステムの実現を先取りして重点的に研究を行い、国内外で成果を発表した。これは、昨年および今年度の研究においてトップダウン的な集団的協調ではなくボトムアップ的な協調が効率性の向上だけでなく、変化への柔軟性を高めるという興味深い示唆が得られたためである。具体的には、複数エージェントにおける継続強調巡回問題において、エージェントが停止した場合と環境が変化した場合という内的・外的な変化に対する効率性と柔軟性を分析した。その結果、外的要因による変化では他の多くのエージェントのふるまいも変化するため、内的な変化とは異なる理由で収束に時間がかかることが確認された。 提案した個の自律的学習と個体間の単純な交渉によって創発された分業が内的な変化の際にその役割を動的に変化させることで柔軟に対応できること、また、対応すべき変化の規模が大きい場合にはノード単位の小さな粒度の学習と戦略・方針といった大きな粒度の学習が平行して行われていることで対応できることを示した。提案した手法によって動作するエージェントは両方の変化に対し別の機構をはたらかせることで柔軟に対応した。 項目(4)においても他の研究者との連携により、全体(集団)の状況を表すごく簡単な情報を個のエージェントに与えることで、それぞれのエージェントがシステム最適に近づくように戦略を調整できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は予定通り進んでいると考えている。概要でも述べたように、計画の項目(4)についてボトムアップに創発された協調が変化への柔軟性をも向上させるという興味深い示唆を得られ、国内外での成果発表を行った。特にエージェント間でどのようなふるまいが起きているかという疑問に対し、役割の動的な変更や異なる粒度の学習がはたらいていることを検証でき、これは本研究の目的である変化に柔軟・低コスト・高効率な自律分散システムの実現に寄与すると考えられる。また、進展の見込まれた項目(4)を中心に取り組んだが、項目(4)についても他の研究者と共同で進めている研究において、巡回問題のみでなくタスク割り当て問題においてもトップダウン的な協調手法を行う際に起こりうる課題と、トップダウンな情報がそれぞれの個体に与える影響についての示唆が得られた。それらの成果も国内外にて成果発表を行っており、来年度の発展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、項目(3)集団としての協調・集団間の協調メカニズムの解明について研究を進めるとともに、最終年度としてこれまで得られた成果を統合した成果発表を予定している。本年度は個体の行動によるボトムアップな協調創発に大きな可能性が見込まれたため、その観点でも継続して研究をすすめるが、逆の手法であるトップダウンな協調についても知見を深めることで、両者のアプローチを統合した協調手法の提案を試みる。 また、他の研究者とも連携し、より広範な問題において上記の観点で研究を進めることで、汎用的な手法やある手法がどのような問題に依存するかについての分析をまとめあげることを試みる。
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