研究課題/領域番号 |
16J12039
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
上野 秀貴 群馬大学, 大学院理工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 感光性材料 / 細胞外マトリックス / 生体機能 |
研究実績の概要 |
本研究は、厚膜感光性材料により作製される疑似細胞外マトリックスと、生体内環境を再現する細胞培養用送液デバイスを組み合わせ、人体の代謝機能に注力した人体機能再現システムの構築を目的としている。具体的な活動内容は、(1)疑似細胞外マトリックスの作製、(2)細胞培養用送液デバイスの作製、(3)作製した疑似細胞外マトリックスとデバイスを組み合わせた人体機能再現システムの構築に分類される。以下に各々の本年度における進捗状況を記載する。 (1)疑似細胞外マトリックスの作製:本年度は2次元平面構造と3次元立体構造を有する疑似細胞外マトリックスの作製を計画していた。2次元疑似細胞外マトリックスは高い紫外線透過性を有するオムニコートと裏面露光法を用いて作製した。3次元疑似細胞外マトリックスは傾斜露光法と酸素プラズマアッシングを組み合わせて作製した。走査型電子顕微鏡による観察より、いずれの疑似細胞外マトリックスも目標としていた4um以下の多孔構造を有し、目標形状と寸法を満たしていることを確認した。 (2)細胞培養デバイスの作製:デバイスの作製に関しては、当初ペリスタリポンプを用いることを計画していたが、電磁気力の細胞への影響低減および構造・取扱いの簡便性から、管内圧力損失を用いた機構に変更した。作製したデバイス内において設計値と類似した流量を取得できた。現在、細胞を用いたデバイス機能評価実験を遂行中である。 (3)細胞培養による人体機能再現システムの評価:当初の計画通り、次年度以降、細胞培養デバイス評価終了後にシステムの構築と評価を行う。 以上、本年度は、厚膜感光性材料による2次元および3次元の疑似細胞外マトリックス作製と、管内圧力損失を利用した細胞培養用送液デバイスの作製を行った。次年度以降、作製した細胞培養用送液デバイス評価と人体機能再現システムの構築と評価に取組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究において、当初の計画通り、厚膜感光性材料を用いた疑似細胞外マトリックスとなる2次元および3次元の多孔メンブレン構造を作製できた。さらに、細胞培養用送液デバイスの作製が成された点を考慮し、課題遂行がおおむね順調に進んでいると評価する。 一方、当初の研究計画との相違点として、留学先機関の変更(受け入れ研究者は研究計画書と同一)を挙げる。変更後の留学先であるNational Institute of Standards and Technology (NIST)の研究設備を用いることで、当初の計画にあったCaco-2細胞のみでなく、Huvec cell, HepG2 cell、さらにその他の人体細胞を用いたPrimary culture を行うことができる。よって、今後は当初の計画以上に多種の細胞を用いた評価実験を実施できると考えている。また、受け入れ研究機関である群馬大学が感光性材料の作製に注力した設備を有していることと比較し、NISTはSi等の無機材料の加工設備を多数有しているゆえ、今後それらの点を考慮し、より人体の構造に近いデバイスとシステムを設計・作製できると考えている。 以上の研究結果と計画変更内容より、本年度の研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、(1)初年度に作製した細胞培養用送液デバイスの細胞培養による性能評価、(2)より人体の内蔵・血液量構成比率に類似したデバイスの設計と作製、(3)上記デバイスと、厚膜感光性材料により作製される疑似細胞外マトリックスとを組み合わせた生体機能再現システム構築の大きく3構成にて実施する。 (1)細胞培養用送液デバイスの性能評価:初年度に作製した細胞培養用送液デバイスの細胞培養による評価を行う。作製済みのデバイス内において多種の細胞を培養しデバイスの有用性を検証する。評価方法として、顕微鏡を用いた細胞状態の観察と、培養に用いる培地内のアルブミンと尿素量の変化を取得する。 (2)より人体の内蔵・血液量構成比に類似したデバイスの設計と作製:(1)に記載したデバイスは人体の臓器構成細胞数比に注力しているが、デバイス内に送液する血液の代用である培地量については十分に検討していない。よって、デバイス内に形成される流量比を人体の構成比率により近づけるため、FEM流体解析を用い微小流路形状の最適化を図る。作製後は、まず市販の多孔スカフォードを細胞外マトリックスの代用として使用し、多孔スカフォードを内蔵したデバイス内での細胞培養による評価実験を行う。評価項目は上記内容と同様である。 (3)生体機能再現システム構築:厚膜感光性材料を用いた疑似細胞外マトリックス作製については、初年度に取得した作製条件と、受け入れ研究機関である群馬大学の設備を利用し共同研究体制にて作製を進める。さらに作製した疑似細胞外マトリックスと細胞培養用送液デバイスからなる生体機能再現システム内にて細胞培養を行い、提案システムの有用性を評価する。 以上、平成29年度は、細胞培養用送液デバイスの評価、改良型細胞培養用送液デバイスの作製、および28年度に作製した疑似細胞外マトリックスを用いた人体機能再現システムの構築に取組む。
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