「b値をFRP構造に適用する際の問題点」では,4種類のCFRP積層板とガラスクロスを有するGFRP板について引張試験を行い,発生源から異なる距離に設置した複数のセンサでAEを計測し,それぞれについて一般的なb値を算出している.そして,発生する損傷モードが単一でAEの周波数が狭帯域になる場合には,b値はAEの伝搬距離により変化しないが,様々な損傷モードが発生してAEの周波数が広帯域になるとb値は変化することを明らかにしている.その結果,FRP構造は一般に損傷度に応じて発生する損傷モードが変化することから,一般的なb値をFRP構造の損傷度評価に適用するのは難しいと結論づけている. 「FRPの劣化がb値に与える影響」では,FRP構造をAE試験で長期連続監視する際に,AEの伝搬媒体となる材料の劣化が一般的なb値に及ぼす影響を検討している.GFRP試験片に紫外線を照射して劣化させ,引張試験を実施し,計測したAE信号から減衰係数を求めて紫外線照射時間との関係を求めた結果,紫外線照射によって減衰係数が変化し,これがb値に影響を及ぼすことを明らかにしている. 「FRPの損傷度評価のための修正b値」では,FRP構造に適用可能な修正b値を提案している.修正b値は,複数のセンサで計測したAE信号から発生源におけるAEの振幅を推定し,それを用いて発生源におけるAEの振幅分布を推定して求めるもので,AEの伝搬距離や材料劣化の影響を受けない.提案した修正b値の適用性をGFRP試験片の引張試験で得たAE信号を用いて検証し,その有効性を実証している.
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