研究課題
脳梗塞を含めた多くの組織傷害はマクロファージを中心とした急性の自然免疫応答を惹起し、炎症収束後は組織修復や線維化を誘導する。しかしその後の慢性期には炎症は収まり免疫はあまり関与しないと考えられてきた。我々はマウス実験的脳虚血 (脳梗塞) モデルを用いて、発症1週間以内の急性期におけるマクロファージやγδT細胞を中心とした自然免疫関連炎症が脳内炎症について明らかにしてきた。しかし、慢性期の獲得免疫応答については不明な点が多い。本研究では、発症2週間目以降の慢性期には多量のT細胞が浸潤しており極めて特殊な様相を示すことを見出した。脳梗塞後7日目から21日にかけて梗塞巣におけるT細胞の増加が認められ、IFN-γ陽性のTh1細胞とFoxp3陽性の制御性T細胞(Treg)が大半を占めた。脳梗塞慢性期にTregを除去したマウスでは、アストロサイトのグリオーシス(瘢痕化)が亢進し、神経傷害性アストロサイトへと変化していた。最近、組織特異的なTregについて報告されているが、脳Tregは脂肪や筋肉や大腸などに局在するTregとは異なる特徴をもっていた。脳TregはCCR6、CCR8、IL-33受容体(ST2)セロトニン受容体7を高発現しており、CCL20、CCL1依存的に脳内に浸潤した。IL-33やIL-2さらに神経伝達物質であるセロトニンによって増殖することが分かった。脳内Tregの産生するAmphiregulin(Areg)がアストログリオーシスを制御し、神経症状の回復に寄与した。脳Tregともいうべきいう新しいT細胞サブセットが慢性期の脳内炎症制御と組織修復に重要な役割を果たすことが明らかとなった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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