研究課題/領域番号 |
16J30003
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
上﨑 麻衣子 立命館大学, OIC総合研究機構, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
キーワード | オプティックフロー処理 / 自己運動知覚 / 感覚変換 / size-contrast錯覚 |
研究実績の概要 |
昨年度より取り組んできた研究の目的は,自己運動に関する感覚的手がかりが聴覚情報に限られる場合の,知覚および認知への影響について検討することである.一つの感覚モダリティの物理的特性をもう一つの異なる感覚モダリティと相互性のある刺激に変換する手法を用い,視覚的自己運動情報を聴覚情報に変換することで,その聴覚的自己運動情報が触覚を用いた物体の大きさの評定に及ぼす影響を検討した.本実験では,実験参加者が前進運動もしくは後退運動と一貫性を持つ聴覚刺激を聞いている間に,触覚を用いて手中のオブジェクトの長さを評定した.その結果,参加者の前進運動を一貫性のある聴覚刺激の呈示中のみにおいて,オブジェクトの長さが過小評価されることがわかった.これは評価対象の感覚表象が,前進運動により大きくなる環境内のオブジェクトの感覚表象と反比例し,実際の大きさより小さく知覚されたためだと考えられる.このようなsize contrast錯覚は,単独のモダリティ内においては多く報告されているが,本研究で見られたような聴覚-触覚間でこのような効果が見られたという報告は今までにない.また,聴覚刺激が参加者の前進運動と一貫している場合に限り以上のような錯覚が起こった(後退運動と一貫性を持つ聴覚刺激および自己運動情報を含まない聴覚刺激の呈示中には,聴覚情報による触知覚の調節は見られなかった)という本研究の結果は,自己前進運動に関する感覚情報が他の感覚情報と異なって処理されることを示唆する.本研究の成果は今年度開催された国際学会APCVならびにECVPで発表した.なお,以上の結果をまとめた論文は現在Scientific Reportsに投稿中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
博士課程時より継続的に取り組んできたオプティックフロー処理を支える白質繊維束(stratum proprium of interparietal sulcus; SIPS)を探る研究は,データ解析方法の改良を経て順調に進み,論文がBrain Structure & Functionに掲載された.当初の計画では採用3年度目に予定していた,大規模データを用いた白質繊維束SIPSの妥当性の検証は採用2年度目に行い,その結果も上述の論文中で議論した.ポスドクとして着手した感覚変換ソフトを用いた研究も,トルコ・サバンチ大学にて現地の研究者と共同で行い,その成果をAsia-Pacific Conference on Vision並びにEuropean Conference on Visual Perceptionにて発表した.各学会における国内外の研究者からのフィードバックを生かし,執筆した論文は,現在Scientific Reportに投稿中である.
|
今後の研究の推進方策 |
第3年度は機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging; fMRI)及び拡散強調画像法(diffusion-weighted magnetic resonance imaging; dMRI)を用い,オプティックフロー処理ならびに自己運動感覚と頭頂葉における領域,さらにそれら領域に関連する白質繊維束の相関を検討する.fMRI実験及びdMRI実験を実施するにあたり,所属する立命館大学にはMRI装置がないため,京都大学文学研究科の蘆田宏教授の協力をえて,京都大学こころの未来研究センター連携MRI研究施設のMRI装置を使用する予定である.
|