本研究課題では,複数の観察者に対して,それぞれ独立した情報を同時に提供可能な次世代情報伝達システムの開発を行っている.このシステムは,大きく分けて二つの技術に基づいている.一つ目は,複数の2次元画像を一つの3次元構造体に組み込むための独自設計アルゴリズムである.このアルゴリズムで設計された3次元構造体は,見る方向に応じて異なる画像を映し出す.二つ目は,その3次元構造体を表示するためのボリュームディスプレイ技術である.映像化を実現するために必要な技術となっている. 本年度にまず取り組んだのが,設計アルゴリズムのフルカラー化・動画化の可能性を視覚的に示すために行ったコンピュータグラフィクスシミュレーションである.先行研究で開発したアルゴリズムを赤・緑・青の三原色に適用することでフルカラーの3次元構造体を設計し,それを時間的に切り替えていくことで動画化も可能であることを示した.この成果は世界最大級のコンピュータグラフィクスに関する国際会議・展覧会一つであるSIGGRAPH 2017で発表した.昨年度に提案した屈折補正に関するアルゴリズムとともに詳細な評価を行い,原著論文として投稿中である. また本年度は,発光ダイオードを用いた電子制御型ボリュームディスプレイに関する研究にも取り組んだ.ボリュームディスプレイの画素である発光ダイオードから発せられる光の輝度をコントロールするために,プログラム可能な大規模集積回路(FPGA)を用いた制御回路を作製した.さらに,上述したアルゴリズムの考え方を適用することで,2方向に異なるフルカラー動画像を表示するシステムを開発した.この成果は,SPIE(国際光学会)の論文誌であるOptics Engineeringで公開されている.
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