29年度の研究では、ゲージ不変性を伴わない冪乗型の非線型項を有する半相対論的方程式の初期値問題に対して、時間大域的な解が存在しない為の条件を研究した。
ゲージ不変性を伴わない冪乗型の非線型項を有する方程式の初期値問題を考察した場合、適当な条件の下で時間大域的に解が存在しない事が期待される。一方で、半相対論的方程式は分数階の微分作用素を主要部に有する為、従来の手法で解の延長不能性に就いて議論する事が出来ない。報告者と受け入れ研究員は、分数階微分を主要部から取り除く為の半相対論的方程式の変形を考案する事で、解が適当な条件の下、時間大域的に存在しない事を示した。その後この変形による半相対論的方程式の考察は、戍亥隆恭氏によって尺度不変性の観点から自然なものに拡張されている。
29年度の研究では、適当な試験関数に対する分数階微分を具体的に計算する事で、方程式を変形することなく、より直接的な手法で時間大域的な解の非存在を示した。分数階微分は非局所的な作用素であり、分数階の導関数を、元の関数を用いて各点で制御する事は一般に困難である。特に、試験関数としてよく用いられる台がコンパクトな関数に対しては、分数階の導関数の各点に於ける評価は不可能であるが、本研究では減衰する多項式に対する分数階の導関数の各点に対する評価を具体的に計算し、尺度劣臨界に対する解の時間大域可解性をより直接的な方法によって否定した。特に、分数階の導関数の空間遠方に対する減衰の速度が、多項式の冪によって、対応する古典的な導関数の速度と同様になる場合と、遅くなる場合がある事を示した。
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