研究課題/領域番号 |
16J40018
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
田中 笑子 筑波大学, 医学医療系, 特別研究員(RPD)
|
研究期間 (年度) |
2016-07-27 – 2020-03-31
|
キーワード | 養育者支援 / 子育ち・子育て支援 / エンパワメント / コホート研究 / ウェルビーイング |
研究実績の概要 |
本研究は、長期追跡コホートを活用した子育てエンパワメント指標の開発と専門職との協働による支援プログラムの開発および効果検証を目指している。平成29年度は、昨年度に引き続き評価指標開発に向けた根拠の提示を行った。具体的には、根拠に基づく子育て支援実践が専門職に及ぼす影響について、海外の専門機関の訪問調査、既存研究の系統的レビューにより、さらにエビデンス・テーブル構築を強化、進展した。 具体的には、英国およびブータン王国、地方自治体など国内外において、子育て支援と保育・教育に関するフィールドワークとデータ解析を実施した。出生コホート研究データを用いた統計解析モデルの適用、質的インタビュー調査、周産期から思春期に及ぶ育児環境に関する質問紙調査を実施し、得られた質的量的研究による根拠を統合し、「当事者の力を引き出すエンパワメント」の観点から、定量的に評価可能な指標項目プール(発育発達、社会性、かかわり、意欲、ウェルビーイング、セルフエフィカシー、サポート、連携、保育および教育、権利擁護と多様性尊重の10領域)を作成した。 続いて、作成した指標案について、専門職および国内外の専門分野の研究職とともに協議を行い、実践フィールドにおける実施妥当性を検討し、表現および調査実施計画を調整した。これらの過程で、項目等の修正を行った後、質問紙調査および観察調査とデータ解析を実施した。さらに、専門職による支援が子どもや養育者に及ぼす支援効果に関する経年分析の結果より、子どもの健やかな発達、養育者の身体的、精神的、社会的健康等への影響が示唆され、質的、量的観点より、指標の実効性、妥当性が期待できる成果を得た。得られた評価指標とデータ分析の結果より、成果を取りまとめ学会発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、長期追跡コホートを活用した子育てエンパワメント指標の開発と専門職との協働による支援プログラムの開発および効果検証に向けて、国内外の関連文献のレビューを継続するとともに、具体的な子育て支援に関する物理的、人的、社会的、資源についての検討と、心理学的、脳科学的観点を含めた多角的な評価手法開発の検討、海外の複数の研究実践機関と協働し、国際比較に向けた調整と、出生コホート研究のデータを用いた統計解析モデルの適用による指標開発に取り組んだ。さらに、長期追跡コホート研究のデータベース整備に取り組み、経年分析により、子どもの健やかな発達、養育者の身体的、精神的、社会的健康等への影響が示された。成果の一部は、国際学会および学術雑誌等において公表済みであり、期待通りに研究が進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、開発指標を用いた実装を目指すとともに、システム利用による効果を定量化し、対象属性や支援実態など関連要因の影響を含めた検証を行う予定である。個人、仲間、組織の各システムレベルから質的、量的に検討を行い、「WEB を活用した園児総合支援システム」を中心に展開する大規模コホートデータから、子どもの発達、気になる行動、子どもと家族の特性、育児環境に関するデータを抽出する。得られたデータより、子どもや養育者に及ぼす支援効果について、卒園児のコホートデータを含めた経年分析により、子どもの健やかな発達や、養育者の身体的、精神的、社会的健康への影響を検討し、成果を研究論文にまとめ投稿予定である。また、国際比較を含めた効果検証に向けて協議を継続する予定である。
|