研究実績の概要 |
2017年度は、日本産カメノコハムシ亜科23種について共生細菌を同定し、その多様性および宿主との共進化関係について明らかにすることを目的とした。カメノコハムシ類における共生細菌の体内局在をFISH法で可視化したところ、多くの種で雌雄ともに前腸と中腸の間に2個または4個の小さな共生器官が見られたが、2種からは共生器官が見いだされなかった。雌の卵巣の近傍に次世代への共生細菌伝達に関わると思われる器官を同定した。細菌16S rRNA遺伝子の系統解析の結果、中腸前方の共生器官および雌の伝達器官には同じ細菌が優占しており、ガンマプロテオバクテリア綱に属する新規共生細菌であることが判明した。共生細菌とカメノコハムシ類それぞれにおいて3つの遺伝子領域(共生細菌:16S rRNA, gyrB, groEL、カメノコハムシ類:COI, 16S, 28S)の塩基配列をもとに系統樹を作成したところ、共生細菌の系統関係は宿主カメノコハムシ類の系統関係と一致する傾向にあり、両者の共進化関係が示唆された。多くの種で高度に保存され、器官レベルの特殊化も見られることから、この共生細菌はカメノコハムシ類において重要な生理機能をもつ可能性が示唆された。 また、サルハムシ亜科のブドウサルハムシがもつ共生細菌の同定と系統解析に取り組んだ。カメノコハムシ亜科の昆虫と同様に、本種においても雌雄ともに前腸と中腸の間に指状の共生器官が見られた。また、雌は卵巣の近傍に共生細菌の伝達に関わると思われる器官をもっていた。共生器官内における共生細菌の局在をFISH法で可視化したところ、顆粒状の共生細菌が認められた中腸前方の共生器官にはガンマプロテオバクテリア綱に属する新規共生細菌が優占していることが判明した。現在、本研究成果について国際誌への論文投稿の準備中である。
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