ジンガサハムシの成長に伴う共生細菌の獲得過程を明らかにするための実験を行った。本種の卵塊を観察したところ、卵の前端に共生細菌が詰まった卵キャップが付着しており、幼虫が卵の前端を食い破って孵化するときに共生細菌を体内に獲得すると考えられた。卵から孵化直後の1齢幼虫を解剖したところ、成虫と同様に、前腸と中腸の境界部に4つの共生器官がすでに形成されていた。1齢~4齢幼虫、蛹、成虫における共生細菌の局在をFISH法により可視化したところ、1齢幼虫は孵化後1時間以内の極めて短い間に共生器官内に共生細菌を獲得していることを確認した。 熱帯アジアを中心に分布するヨツモンカメノコハムシの九州以北への侵入経路を明らかにするために、日本国内およびアジア地域で採取された個体における宿主と共生細菌の塩基配列を解析した。ハムシと共生細菌それぞれにおいて3つの遺伝子領域の塩基配列を解析した結果、福岡県で採取された個体の宿主と共生細菌の塩基配列は、中国や沖縄などで採取された個体の塩基配列と大きく異なっており、系統関係も離れていた。これより、福岡県に分布する個体は沖縄や南西諸島などの日本由来ではない可能性が示唆された。 水域に生息し、幼虫は水中で植物の根から汁を吸い、成虫は陸上で葉を食べるネクイハムシ類の共生細菌のゲノム解読と機能解析を行った。その結果、共生細菌ゲノムの機能は、植物の汁に不足しているタンパク質の合成に必要な必須アミノ酸などの栄養素供給と、植物の細胞壁の消化に必要なペクチン分解酵素の生産に特化していることを解明した。
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