生殖機能は視床下部-下垂体―性腺軸により、階層的に制御されている。生殖機能障害は、けっして末梢の生殖器官だけの問題ではない。病因の多くは、内分泌系を制御する中枢機構にある。それゆえ、生殖機能障害の理解や新たな治療法の開発には、生殖機能の中枢制御機構の解明が不可欠である。 卵胞発育、精子形成は、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)のパルス状分泌により制御されている。近年、このGnRHパルス状分泌のパルスジェネレーターとして、視床下部弓状核にあるキスペプチンニューロンが着目されている。弓状核のキスペプチンニューロンは、GnRH分泌を直接促すキスペプチン、GnRHパルス状分泌を促進するニューロキニンB、抑制するダイノルフィンの3つの神経ペプチドが同一細胞上に存在し、KNDyニューロンと呼ばれている。KNDyニューロンがGnRHパルスジェネレーターを形成し、GnRHパルス頻度の調節を行っていると考えられているが、未だ確証はない。特に、ダイノルフィンの受容体であるκ―オピオイド受容体(KOR)は局在が不明であり、特にGnRHパルスを抑制するメカニズムが不明である。そこで、本研究ではKORプロモーター制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するレンチウイルスベクターをラットの脳内に投与し、GnRHパルスを抑制するKORニューロンの局在と投射先の解析をした。 その結果、KORニューロンが腹内側核(VMH)に局在していることが明らかになった。また、KNDyニューロンがVMHのKORニューロンに投射していることと、VMHのKORニューロンがKNDyニューロンに投射していることが示唆される結果が得られた。 これらの研究成果は、順調に研究が進行したといえる。
|