現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)植物根及び種子由来の線虫誘引物質の探索 セイヨウミヤコグサ由来のスーパールート(SR)を用いて、昨年度に分取していた誘引活性画分を、逆相HPLCにより更に精製した。精製した活性画分をプロテインシーケンサーやMSによって分析し、活性画分に含まれるペプチド鎖の部分配列を同定した。得られた配列から予測される誘引物質の分子量と実際の分子量には差異があった。決定された配列を元に合成した未修飾ペプチドを用いた誘引試験では、センチュウは誘引されなかった。これらのことから、誘引活性ペプチドには何らかの修飾が施されていることが示唆された。現在、SR以外の宿主植物の根及びその抽出物を用いて、同様の解析を進めている。 (2)ネコブ形成過程における植物内の分子機構の解析 センチュウエフェクタータンパク質MjD15と植物MAPKカスケードとの相互作用の解析を更に進めた。ANP-MAP65カスケードの構成因子であるNACK1, ANP1, ANP2, MKK6, MPK4, MAP65-3の各遺伝子変異体を用いて、センチュウ感染後に形成されたネコブの切片を作製し、内部構造を観察した。各遺伝子変異体の非感染の根の細胞において、異常な細胞質分裂が起きていることが確認された。感染個体の根こぶにおいても、map65-3について報告されているのと同様、不完全に断片化した細胞壁を持つ巨大細胞が観察された。Yeast Two Hybrid法によって、ANP1, ANP2のMjD15との相互作用部位の絞り込みを行い、MjD15はANP1, ANP2のキナーゼドメインと相互作用することがわかった。また、内在性のMAPKシグナル経路を改変した酵母株を用いて、MjD15の機能評価アッセイを試みたところ、MjD15はANP1, ANP2を活性化しないことが示唆された。
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