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2017 年度 実績報告書

植物寄生性センチュウの感染機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 16J40067
研究機関熊本大学

研究代表者

光増 可奈子  熊本大学, 先端科学研究部, 特別研究員(RPD) (00711839)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2019-03-31
キーワード植物寄生性センチュウ / 誘引物質 / 根こぶ形成
研究実績の概要

本研究では、植物寄生性センチュウの宿主植物への感染の分子機構を、センチュウの誘引からネコブ形成にわたって解明することを目標としている。昨年度に引き続いてこの研究に取り組み、各小テーマについてそれぞれ進展が見られた。センチュウ誘引物質の探索では、根抽出物由来の誘引物質の精製や分析を進めた。その結果として、根由来の誘引物質のうち、一種類について部分的な構造決定を行うことができた。このことによって、サツマイモネコブセンチュウにおける宿主の探索と感染行動が、植物由来ペプチドを誘引因子の一つとして惹起される可能性を示唆し、多細胞生物間における複雑多様な情報交換の仕組みを解明するための重要な知見を得ることができた。ネコブ形成時の植物内分子機構の解析については、宿主の正常な細胞質分裂に関わるとされるANP-MAP65カスケードと、ネコブ形成との間の密接な関わりについて、更に詳細に解析した。Yeast Two Hybrid法や、内在性のMAPKシグナル経路を改変した酵母株を用いることで、センチュウエフェクタータンパク質MjD15がANP1, 2のキナーゼドメインへ結合すること、MjD15はANPの活性化には関与しないことを明らかにした。これらの結果は、MjD15が宿主の細胞分裂の過程を何らかの形で修飾することで、ネコブ形成を促進する可能性を示唆するもので、センチュウエフェクタータンパク質に関する新規の機能を明らかにできると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)植物根及び種子由来の線虫誘引物質の探索
セイヨウミヤコグサ由来のスーパールート(SR)を用いて、昨年度に分取していた誘引活性画分を、逆相HPLCにより更に精製した。精製した活性画分をプロテインシーケンサーやMSによって分析し、活性画分に含まれるペプチド鎖の部分配列を同定した。得られた配列から予測される誘引物質の分子量と実際の分子量には差異があった。決定された配列を元に合成した未修飾ペプチドを用いた誘引試験では、センチュウは誘引されなかった。これらのことから、誘引活性ペプチドには何らかの修飾が施されていることが示唆された。現在、SR以外の宿主植物の根及びその抽出物を用いて、同様の解析を進めている。
(2)ネコブ形成過程における植物内の分子機構の解析
センチュウエフェクタータンパク質MjD15と植物MAPKカスケードとの相互作用の解析を更に進めた。ANP-MAP65カスケードの構成因子であるNACK1, ANP1, ANP2, MKK6, MPK4, MAP65-3の各遺伝子変異体を用いて、センチュウ感染後に形成されたネコブの切片を作製し、内部構造を観察した。各遺伝子変異体の非感染の根の細胞において、異常な細胞質分裂が起きていることが確認された。感染個体の根こぶにおいても、map65-3について報告されているのと同様、不完全に断片化した細胞壁を持つ巨大細胞が観察された。Yeast Two Hybrid法によって、ANP1, ANP2のMjD15との相互作用部位の絞り込みを行い、MjD15はANP1, ANP2のキナーゼドメインと相互作用することがわかった。また、内在性のMAPKシグナル経路を改変した酵母株を用いて、MjD15の機能評価アッセイを試みたところ、MjD15はANP1, ANP2を活性化しないことが示唆された。

今後の研究の推進方策

線虫誘引物質の探索については、SRから単離した誘引活性ペプチドについて、詳細な構造解析や、構造と活性の相関を調査するなど、その性状の明らかにする。また、並行して別種の宿主根でも同様の実験を行い、根由来誘引物質の構造決定を進める。ネコブ形成に過程における植物内の分子機構の解析については、MjD15とANP1, 2との相互作用の結果として、ANP-MAP65経路の活性がどのような修飾を受けているかを明らかにするため、MjD15の機能解析を進める。手法としては、MAPKシグナル経路改変酵母を用いた系による評価、ベンサミアナタバコへの異所的発現による表現系の解析、キナーゼアッセイによる評価を考えている。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Functional characterization of dopamine and neuropeptide G protein-coupled receptors from the silkworm Bombyx mori by aequorin bioluminescence-based calcium assay2017

    • 著者名/発表者名
      Hiroto Ohta, Kanako Mitsumasu, Toshinobu Yaginuma, Yoshiaki Tanaka, and Kiyoshi Asaoka
    • 雑誌名

      ACS Symposium Series; "Advances in Agrochemicals: G Protein-Coupled Receptors (GPCRs) and Ion Channels as Targets for Pest Control"

      巻: Chapter 6 ページ: 109-126

    • DOI

      10.1021/bk-2017-1265.ch006

    • 査読あり
  • [学会発表] 植物寄生性線虫の生体アミン受容体の単離と解析2018

    • 著者名/発表者名
      光増 可奈子,澤 進一郎,太田 広人
    • 学会等名
      日本農芸化学会2018年度大会

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公開日: 2019-12-27  

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